─── 明日、もし晴れたら ───
歴史の授業は苦手だから簡単に
気が遠くなるほど遥か昔の話
とある科学者達の功績により
人類は地球外の惑星進出に成功し
地球を捨てた
その開拓者達の子孫である私は
自然の晴れた日を知らない
生きものが生きていけるように
作物がよく育つように
常に完璧に整備された人工の天気
面白くないよね
私の知る全ては本物だけど偽物な気もする
遠い祖先が皆感じていた
晴れた日の感覚を私も感じてみたい
─── だから、一人でいたい。 ───
一緒に居るのは嫌いじゃないよ
ただ今は違う
特別な理由はこれといって無い
集中したい
そして楽しみたい
大好きな事に夢中になりたい
ただそれだけだから気にしないで
それでも一緒に居たいと言うなら
隣に座っていてもいいよ
退屈で寝ちゃっても知らないけど
─── 澄んだ瞳 ───
天気がいいから外へ行こうと誘われて
君の後ろをゆっくり歩くいつもの散歩道
変わらぬ日常
ずっと続けばいいのに
ふと気配を感じた
どうしたのかと尋ねる
答えはこうだ
君を見てるんだよ
君の瞳をね
いつ見ても美しい色彩だ
こう言われるのは何回目だろう
初めは恥ずかしかったが今は慣れた
それなら君も同じになるかと
意地悪っぽく言ってやった
返事は返ってこない
答える代わりにまだ君は見つめているんだね
光を失って久しいこの瞳を
─── 嵐が来ようとも ───
今夜の風は誰かの泣き声に聞こえる
森の木々はざわざわと震えている
空は真っ暗で月どころか星すら見えない
この世の終わりだと錯覚するほどに
いつも目にしている物や風景が全く違って見える
両親は仕事で不在
家には自分と愛犬だけ
布団をかぶり
小さな灯りを頼りにして
不安な気持ちをなんとか心の奥へ閉じ込める
不意に風がドアを叩き
隙間風が灯りを連れ去る
閉じ込めたはずの不安はまた溢れかけ
思わず隣にいる家族を抱きしめた
一緒にいるから。1人じゃないよ。大丈夫。
布団の中で感じる温もりが
一瞬で不安をどこかへ連れ去ってくれた
─── お祭り ───
この1週間は特別に街中が賑やかになる
確か150年だったかな
明るい時間からお酒を呑んで楽しそう
小さな子供も大人もお年寄りも
みんなが喜び浮かれてる
外の国から訪れる人もいるんだって
時間とお金を使ってご苦労様
暗くなるにつれて街の華やかさも
人々の歌い踊る音も増していく
ねぇ先生
この世を去ってから祝われるのは嬉しいですか?
先生の功績を実力を
どれだけの人が本当に理解しているんでしょうね