『永遠に』
永遠に明日が来なければいいのに、
私は寝ることが嫌いだ。
いや、これには少し語弊がある。
寝たら明日が来てしまうことが嫌なのだ。
もちろん、昼寝は大歓迎である。
あぁ、地球よ止まってしまえ、
前進しなくていいから、後退しない停滞をしたい。
『懐かしいと思うこと』
“懐かしい”という感情をなんと説明しよう。
初めて出来た外国の友達に聞かれた。
「懐かしいってどういう感情?どういう意味なの?」
その時初めて、英語には懐かしいという単語は無いということを知った。
私は頭を悩ませてしまった。
感情を相手に伝えることは難しい。
懐かしいという言葉にはなにか、昔のことを思い出す以上の感情が詰まってる気がする。
『昔のことが思い出されて、心がひかれる。』
スマホの画面には、納得できるような、できないような言葉が並べられていた。
「どうしたの?」
私を少し心配そうに見つめる友達が言った。
自分の語彙力の無さと、言語化する能力の無さを憎んだ。
このどこか懐かしさを感じる秋と、切なさ
それを知って欲しかったのに、どう伝えればいいか分からない。
「────っとね、」
結局私はさっき見た、懐かしいの意味をそのまま答えてしまった。
『もう1つの物語』
英検も近づいている中で、係の仕事もある。明日には小テストもあるし、もしものための一般の勉強もしながら、面接練習とディベート練習する私。
ひとたびページをめくれば、
ドラゴンと戦う勇者にでも、先生と恋をする生徒にでもなれる。
物語の終わりは決まっていて、ドラゴンに殺されて死ぬ勇者も、ドラゴンを倒して世界に平和をもたらす勇者もいる。
いつだって、作者のさじ加減。
私は今日も、
私しか描けない、私だけの物語を
ハッピーエンドに出来るように、
スライムもドラゴンもいないけど
作者の私は今日も戦う。
『紅茶の香り』
君からはいつも紅茶の匂いがしていた。
紅茶に詳しくない私は、それがなんの種類の紅茶なのかは分からなかったけど、君の隣を歩くとき微かに香るその匂いが私は好きだった。
初めて君の家に行った時、君のお母さんがクッキーと一緒に紅茶も運んできてくれた。
その時初めて、君からする香りがダージリンティーの匂いだったことを知った。
砂糖の量にもこだわりがあるらしく、角砂糖2つが1番美味しいらしい。
私には少し甘すぎたけど、君があまりにも美味しそうに飲むから、つられて飲みきってしまった。
良かったら貰って、と差し出されたものは、今飲んだ紅茶のティーパックで、
僕のお気に入りだから、と少し照れながら君は言った。
家に帰ってから砂糖を入れず、ストレートで飲んでみた。
やっぱりこっちの方が美味しい気がしたけど、
君と同じものが飲みたくて、角砂糖を2つ入れた。
未だに紅茶の種類はダージリンティーしか知らない。
私は今日も、ダージリンティーを2杯注ぐ。
君のせいで、朝食がご飯派からパン派になってしまった。トーストの焼き加減にも慣れたものだ。
1度だけ、The和食という朝食にしてみたことがあった。
たまにならいいね。たまになら、と君があまりにも
〝たまにならね〟と強調するから、私は思わず笑ってしまった。
そうね、たまにならと言いはしたものの、君にお願いでもされない限り、もう和食を出すつもりは無い。
あ、君と喧嘩したときにでも、出してみようかしら。
なんて悪巧みしてみる。
そろそろ私からも紅茶の匂いがするだろうか。
『どこまでも続く青い空』
目を細めながら、空を見上げる。
雲ひとつない晴天に、吸い込まれてしまいそうだった。
ふと、目線を下ろすと全身に鳥肌が立っていた。
波に揺られて、優雅に浮かんでいたはずが
気づけば、ずいぶん遠くまで来てしまっていた。
僕は慌てて砂浜の方に戻る。
振り返ると地平線が真っ直ぐ伸びていて、
空と海の青さの違いに気づく。
海と空に囲まれて、孤独を感じたあの体験も
直射日光に肌を焼かれている中で感じたあの寒気も
僕は忘れることが出来ないだろう。