『放課後』
夕日に照らされる教室で君と二人きり。
『カーテン』
カーテンをお開けになって、朝日に照らされ、焼かれるのも良いことでございます。
なにぶん、私の朝食はパン派でして、焦げる寸前のトーストを好んでおります。ええ、火の扱いというのは、まったく充分なものでございます。耳に響く、目覚まし時計のピピピという音が、小鳥のさえずりのようで、ああ、わたし、来世は鳥になって、喉が焼き切れるほど鳴いてみたいのです。そして、自分の炎に包まれて、焼き鳥になってしまいましたら、あなたの飲み会のつまみにでもなってしまいたいですわ。
さあ、焼かれてしまいましょう、天からの恵みを全身で受け止めてみましょう、そうして、この生をしまいにしてしまいたいのです。
ああ、なんということでしょう。
今日は雨でございましたか。
『涙の理由』
私の涙の理由が君以外にいるわけないでしょ。
LINEの返信なんて良くてリアクション。
遊びに誘うLINEに既読無視はさすがにびっくりしたよ。
あの文章考えるのに、私3日かけたんだよ。
ほんと酷いよ。
それでも君を好きな私は、馬鹿ですか?
わかってる。馬鹿だなーって
君の矢印が私に向くことはないって、
君の瞳に私が映ることはないって、全部わかってるよ。
『ココロオドル』
今日はたまたま1本前の電車に乗れた。おそらく信号で、ひとつも引っかからなかったからだろう。1本前の電車に乗れるだけで、座れるし、駅から走らなくていいし最高だ。毎日これに乗れたらいいのだが、何故か朝はギリギリの行動をしてしまう。なんて考えながら、イヤホンを取り出し耳につける。せっかく座れたし、単語帳でも見ようかな〜と鞄から取り、ふと前を見ると、綺麗な顔をした子が小説を読んでいた。制服を見る限り、同じ学校なのだろう。窓から浴びる朝日がまるで後光のように指している。背筋を伸ばし、少し伏せ目で本を読む様は、女神のようだった。ついじっと見てしまっていた。彼女はニコッと笑い、再び視線を本に戻す。きっと私は明日から、1本はやい電車に乗るだろう。そう確信した。
『束の間の休息』
六時間目。
先生が職員室に忘れ物をしたらしい。
授業が始まって30分経った頃だった。
1番後ろの特等席の俺は、眠気が纏う中、教室を見渡す。
隠れてお菓子を食べるやつ。
即座に机に突っ伏すやつ。
隣の席と話すやつ。
色んなやつがいるなーと思っていると、遠くの席で後ろを向いてるやつと目が合った。気まづく思い、目を逸らそうとすると、なにやら口を動かしている。
(なむとうだね)
???
もう1回、と指でサインを送る。
(ね・む・そ・う・だ・ね)
急に恥ずかしくなって、俺は目を逸らしてしまった。
目の端で笑ってる顔が見えて、何故か無性に悔しかった。急ぐ足音が聞こえ、先生が戻ってきた。
俺は残りの12分間、そいつの後頭部を睨み続けた。
6時間目が終わり、帰りの準備をしている時、やつが近づいてきて言った。
「そんなに見つめられたら、溶けちゃうよ」
2度目の敗北を味わった俺は、「帰る!」と捨て台詞を吐いて教室から撤退した。