九至 さら

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10/3/2024, 12:37:42 AM

お題『奇跡をもう一度』

クルッ
ドサッ
「はい、雑魚〜」
「次俺の番な!」

既にご飯は食べ終わったお昼休み。突然にもペットボトルチャレンジが始まった。ペットボトルを空中で一回転させてから、立たせるというチャレンジ。今それを4人連続で成功させようとしている。

「おい!見とけよ」
クルッ ストン
「うおおおー!!」
「まずは1人目!」

ただのつまらない遊びだと思うかもしれないが、何故かこれは異様に盛り上がる。高校3年生になっても馬鹿なことしかやってない。こうやってバカ騒ぎするのもあと何日かと思うと…、
クルッ ストン
「まじか!!」
センチメンタルな気持ちになってる俺を置き去りに、2回連続成功。
「やべー、緊張する」
「3回連続かかってんだから、絶対成功させろよ」
「おっけーおっけー、まかせろ」
クルッストン
「サイコーー!」
「ナイス」
「やるぅ〜!」

3人から賞賛を送る。残る1人の顔がプレッシャーで歪んでいる。そう、俺の顔である。どうせそんな連続で出来ないだろうと高を括っていた。

「待って待って、ノーカンの練習させて」
「バカバカ、そんなんさせる訳ないだろ」
「ここで決めてこその男!」
「お前の男気見せてみろっ!」
成功するビジョンが見えなすぎる。しかし、もうやるっきゃない状態になっている。
「失敗しても、罵詈雑言は禁止な」
「いくぞ」


クルッ


ストンッ


「うおおおおぉ!」
「俺らすげー!!」
うるさくなりすぎて、周りの視線が体を突き刺す。でももう、そんなのどうでもいい。今が楽しい。
「こんなしょーもないのに、奇跡使うなんてもったいねーよな」
「それはまじでそう」
「でもさ、もっかいやんね?」
ニヤニヤ顔でペットボトルを掴む。

あと何日かだけのこの青春を、もう少しだけ噛み締めたい。体育祭や文化祭みたくあの時楽しかったね、と思い出されることは無いだろうけど、確かにあった俺たちの青春を。
クルッストン
「まずは1人目ーー!!」