近しいときがあって、でも、近しいままでは「懐かしい」とは思わない。離れている今があって初めて、懐かしさが生まれる。そして、大抵の場合、本当の意味で戻ることはできず、「懐かしい」と思うことで擬似的に距離を縮めているのだ。
/お題「懐かしく思うこと」より
たった一つの物語ではなくとも、よいではないか。いくつもの分岐点があって、一つの道を選んでも、二つの道を選んでも、その度に新たな物語を始めるのも、よいではないか。壮大な長編作品にしなければ、と物語を続けることに苦しみ、諦め、止めてしまうくらいなら、短編でも掌編でも、その寄せ集めでも、自分の言葉で物語の幕を下ろせることの方が、よほど幸いで、尊いことだろう。
/お題「もう一つの物語」より
向こうの光が見えるから、目を閉じたくなるのだ。一つの光もない、真っ暗闇だったならば、目を開けようが閉じようが、何も変わらないし、分かるはずもないのだから。
/お題「暗がりの中で」より
昨晩はデザートに季節のタルトをいただいた。ちりばめられた瑞々しいシャインマスカットには、透き通るようなダージリンの香りがよく合う。紅茶の香りといえばアールグレイだが、そちらは香料として使われているベルガモットに合わせて、柑橘系のものといただくのが好きだ。紅茶が好きと言っても、茶葉からきちんと淹れるような丁寧さは持ち合わせていないのだが、ティーバッグのアソートから最適な一つを選ぶのは、少し贅沢な気分で、至福のひとときである。
/お題「紅茶の香り」より
「愛」という字の読み方の多さに、愛を形容することの難しさを感じる。それでも、愛の解釈の多様さに比べれば、随分と省かれている方だ。愛によって生まれることもあれば、愛によって死ぬこともある。私が持っている愛と、あなたが持っている愛は、きっと違うだろう。ただ、一つ言えることは、「愛」はその人のどこかには必ず存在するということだ。
/お題「愛言葉」より