さいあく、って貴女は言う
あ、のところは、や、に聞こえる
それから、言う、も、ゆうって言う
最もひどいさまに使う言葉を、今日だけでもう5回は聞いた
眉を顰める貴女に向けて、慣れた手つきでチョコを手渡す
「ヤバ優しすぎ!!」
その笑顔を自然に受け取ることができるまでに、どれほど時がかかったことか
思わず浮かれて、う、のところが、お、に変わる
「さいこー、でしょ?」
#19 お題:最悪
包み隠さず正しく素直であることは
悪いことではないのに
四角四面で、どうにも堅苦しいこと
文字通りって感じがする
#18 お題:正直
父さんが母さんと別れて
あの人と小さいお前がうちに来た
今までとは違う明るい日常
優しい空気
正しい世界って感じ
もちろん喧嘩の絶えない前が間違ってる家族で
俺はその残りもの
別に愛されてないわけでも
不自由してるわけでも無い
でも俺以外のみんなで充分じゃね?って思うだけ
3って完璧な数字らしいし
だからいつもにこにこしてるお前を見て
いいよな、何も考えてなくて
とか思ってた
こんなにでかくなってから
「俺と俺の母さんが、兄さんの大事な家族をぶち壊したんだ」
なんて泣かれると思ってなかった
「兄さんの何もかもを奪ったんだから、絶対に幸せにするって決めたんだ」
って、いつもにこにこしてたのは、家庭を楽しんでもらおうと、思ってたからだって
そうか、
そうか。
お前、いいやつだな
でもな
おれ
おまえらがいなければ
って
やっぱり たまに
思っちまうんだ
#17 お題:「ごめんね」
通学のときはアームカバー
冷えた教室では冷房避けのカーディガン
でも、体育の時だけ
その時だけはあなたも嫌々半袖になる
執拗に塗った日焼け止めのせいではなくて
内側から透けるような白
わたしは束の間
その細いのに柔らかそうな二の腕に
目を奪われてしまうのです
#16 お題:半袖
休みな
休んでもうまくはやれないよ
でも、それを許せるようになるから
#14 お題:あの頃の不安だった私へ