父さんが母さんと別れて
あの人と小さいお前がうちに来た
今までとは違う明るい日常
優しい空気
正しい世界って感じ
もちろん喧嘩の絶えない前が間違ってる家族で
俺はその残りもの
別に愛されてないわけでも
不自由してるわけでも無い
でも俺以外のみんなで充分じゃね?って思うだけ
3って完璧な数字らしいし
だからいつもにこにこしてるお前を見て
いいよな、何も考えてなくて
とか思ってた
こんなにでかくなってから
「俺と俺の母さんが、兄さんの大事な家族をぶち壊したんだ」
なんて泣かれると思ってなかった
「兄さんの何もかもを奪ったんだから、絶対に幸せにするって決めたんだ」
って、いつもにこにこしてたのは、家庭を楽しんでもらおうと、思ってたからだって
そうか、
そうか。
お前、いいやつだな
でもな
おれ
おまえらがいなければ
って
やっぱり たまに
思っちまうんだ
#17 お題:「ごめんね」
通学のときはアームカバー
冷えた教室では冷房避けのカーディガン
でも、体育の時だけ
その時だけはあなたも嫌々半袖になる
執拗に塗った日焼け止めのせいではなくて
内側から透けるような白
わたしは束の間
その細いのに柔らかそうな二の腕に
目を奪われてしまうのです
#16 お題:半袖
休みな
休んでもうまくはやれないよ
でも、それを許せるようになるから
#14 お題:あの頃の不安だった私へ
すげぇ美人なんだ、黒髪の
背も高くてさ
くっきり二重で、目がでかくてよ
カラコン?
入ってねーよ、お前じゃねーんだから
あとスタイルもいい
いや、まだ話しかけてはねーよ
うるせーな、電車の中でいきなり声かけたらおかしいだろ
まぁ、たしかにそこでしか会えねーけど
てか、ちげーよ
おまえは、どうなんだよ。彼氏と
あー
そうかよ
よかったじゃん
ケンカして泣いて、より戻してって。
ほんとそればっかだな
俺?あーだからその、なんかおしゃれな感じが良いんだよ
茶髪のさ
え?あー
間違えた
黒髪な、あー黒髪の
何でもいいだろ
#13 お題:恋物語
頼まれたって人は殺せないよ。
法外なお金をあげることもできない。
あなたの味方であり続ける保証もないし、
ペットのように飼育してあげるなんてもっての他だ。
道端の小石を拾うように、絶えず苦難を排除してあげることも、
雲間から差し込む光のように、行先を照らしてあげることも、
そのどれも、きっとできない。
でも。
いま。
わたしの袖を引いたその冷たい手を
振り返って握り込むことなら
一緒に座り込んで
朝を待つことなら
わたしにも、きっと、できると思うんだ。
#12 お題:愛があれば何でもできる?