放課後 (執筆途中)
私が死んで、妖怪になるとしたら、おそらく放課後女とか放課後ばばあになるだろう。
そのくらい私の「放課後」に対する執着心は凄まじい。
「放課後」とは、すべての学生が手に入れられるものではない。この3文字には、あらゆる物事が詰まっている。大人がギラギラと煩悩とよだれをむき出しに欲している「青春」とは、言い換えれば「放課後」そのものではないのかと思ったりする。
放課後には、色んなことができる。
部活やら、文化祭の準備やら、勉強もできれば恋愛もできる。放課後には無限の可能性と価値があるのだ。
私がなぜこの放課後に執着しているのか。
それは、私はこの放課後を手にすることができなかったからだ。
涙の理由
放課後、教室の片隅で僕の好きな子が泣いていた。
テニス部が着るウィンドブレーカーを着たまま、
机に突っ伏して泣いている。
それを周りに数人の女子が囲んで話を聞こうとしていた。
彼女は無言のまま顔を埋めている。
どうして泣いてるんだろう。
何があったんだろう。
僕は聞けない。
聞きたいけど、聞けない。
ただのクラスメイトという
たったそれだけの繋がりしかない。
テスト期間ゆえ解放された夜遅い教室に、
彼女を心配してもいい手がかりもなかった。
10.11 涙の理由
ココロオドル
私は愛を感じたとき、心が躍る
誰かに共感したとき、されたとき
涙が出るとき
感情に従うとき
損得をはかったり、
正誤をみきわめたり、
そういったことを、
自分や周りのために勇気を出して言わなきゃいけないとき、発言できる人はとてもかっこいい
それと同じく、
すごく孤独な人に、私も同じだよ、と言える人も、
私はとても勇気があって
とてもかっこいいとおもう
自分が腐りそうなとき、
身近にそういう人が現れると、
私はココロオドル
※全然お題と関係ありません
※独り言です
アンジェラアキさんの拝啓十五の君へ
もう何十回も聞いてるのに泣ける。
15歳だった当時も涙が止まらなくなったけど、
大人になった今、余計に胸に刺さる。
在宅で適当な音楽流しながら仕事してたら
不意に流れてきてボロ泣きしてしまった。
なんて素晴らしい歌なんだろうな。
荒んで人に攻撃したいくらい荒れてても、
人に優しくしたい気持ちに変えてくれる。
作品から人の心が救われるものはたくさんあるなかで、
本当に癒しの力を感じずにはいられない歌。
こういう作品が作れるようになりたい。
力を込めて
共依存に陥る女は馬鹿だと思っていた。
男で人生を狂わされるなんで1番滑稽な人生だと信じて疑わなかった。
そして私は、今、まさしくその滑稽な人生の真っ只中にいる。
東京都新宿区上落合。
どうしても落合に住みたかったのは、歩道が広いから。
ついでに車道も広い。歩道も、人が通る道と自転車が通る道に分かれていて、自転車や車の通りのストレスを感じることがない。歩行者だけ避ければ良い。
道路から感じる区の財力、さすが新宿区。
私は落合駅徒歩3分の好立地マンションの6階にいる。
1人布団にくるまりながら、天井を睨んでいる。
気に入っているおしゃれな窓辺からは、綺麗な空が広がっていて、窓辺に置いた頑丈なモンステラが殺風景な部屋を彩っていた。
つい数ヶ月前までは、ずいぶん賑やかな部屋だった。
6年近く連れ添った、作家志望の男がいたからだ。
そいつは、いかにもクズそうな男だった。
タレ目の優しそうな瞳と、すぐそばの泣きぼくろが、女の警告を煽る。小柄で華奢な、色白の中性的な男だった。
そして、見た目から予想できるような、優しい性格だった。
言って欲しい言葉をよく理解し、
知識も豊富、
受け止める許容量。
この6畳の空間で幸せを満たしてくれるには、飽和状態だった。
男のように力をつけよと教育された私はコロっと心を掴まれた。
私は落合のこの6畳のお城で、お姫様にでもなったかのように有頂天になっていた。
そしてこの落合のお姫様を維持するために、かかった金は膨大であった。
なんせ、その泣きぼくろの王子様は働かないのである。
端的に言えばヒモである。
だが別角度で言えば、作家志望の夢追い彼氏、という部分でもあった。
ただ、こんな美男子、こんな理解者、もう現れないんだから。と、何度も自分に言い聞かせ、読んで字の如く身を粉にして働いた。
働いて得られたものは、落合の賃貸と、働かない王子様。当時は結構それで満足していた。
ところが、無自覚に過度な稼動を続けていると人間も壊れるもので、そんな生活を数年続けたのちに私は限界に達した。40度近い熱が下がらないのである。
のちに、精神科で診断を受け、仕事を辞めた。
仕事を辞めたら、泣きぼくろの王子様は、突如大都会に消えていった。
そして私は、冒頭の職も男も金も失った、哀れな女になったのである。
シンデレラの魔法が解けた時もこんな感じだったのだろうか。いや、シンデレラは灰を被りながらめげず腐らずチャンスを掴んだ女だ。魔法が解けた後も決してこんな惨めな女にならない。どちらかというと、古事記のイザナミノミコトよろしく、黄泉の国で死者の形相で追いかけている方が近い。落合のこの部屋は、いつから黄泉の国になったのか。そして私の黄泉の国にまで、追いかけてくれる人はいなかった。
私は半裸で布団にくるまっていた。
やっとのことで入った風呂を出て、髪も乾かさず、泣き過ぎて嘔吐したのち、力尽きて布団にくるまった。
結構本気で私が1番世の中で惨めじゃない?と、友人にLINEを送ろうとしたところで辞めた。
本気で惨めな時は自分で惨めと言えない。
泣きぼくろ王子は、先月の私の誕生日に一通の手紙を送ってくれた。いい歳して、手紙だけで有頂天になっていた私は、ちょっと哀れで笑えない一線にいる。
手紙には、言い訳がましい罪悪感が述べられていた。
そして最後の文章に一つこう書かれてあった。
「こんなこと言うときっと怒るだろうけど、君が一番女の子だと思う。」
他人の恋愛模様、それは愚の真骨頂である。これは母がよく私に言っていた。私も中学生の多感な時期によく同級生を馬鹿にしたものだ。
だが、私の脳からは報酬分泌がドバドバと溢れ出していた。
泣きぼくろ王子は、ホストの星で生まれたんだろうか。
才能がある。
かく言う私もホストにのめり込む才能がある。
なるほど、こういう人の心のデコとボコを埋めるビジネスなのか。稼げる理由がわかる。
過度な厳しい教育の元、
男のように育てられた私は、
女性としての性自認が出来なくて、
酷くそれに悩んでいた。
性別が宙に浮いてるようで、
同性の女の子としか付き合ったことがなかった。
もちろん、彼女たちのことも好きだったが、
心にぽっかり空いた穴のようなものが埋まらなかった。
確かにそこにあるのに、自分で確認できていないような感覚。
泣きぼくろ王子は、私に一つ、女としての性別を与えてくれたように感じていた。
私はその手紙を見て、何度か嬉しくて泣いたのである。
私はその手紙を、力を込めて、破いた。
自分の中にある最大の力で破き続けた。
細かく破いたのち、ゴミ袋に勢いよく捨てた。
あのまるっこい女の子のような文字はもう2度と読めない。
でも、読めてなくていい。
私はあの手紙がなくても、女だ。
あの男がいなくても女なのだ。
誰になんと言われても、私は女だ。
涙とゲロと鼻水で汚れた顔を拭いた。
鏡の前にいる自分を見つめ、
貧相な胸に下着をつける。
カメリア5番のリップを出して
私は唇に色を乗せた。