なんど冒険の書でやり直したって、あの人を救うことは出来なかった。
この本を利用して少し運命を覗いてみたら、どうやらあの人が助かる可能性はゼロらしい。
なら、そうだな、もう。
この本ごと、ぜんぶ、焼き払ってしまおう。
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バカみたい
あなたがいるから、わたしは一人じゃないわ。
「……あの子、いっつも空中に話しかけてるよね」
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二人ぼっち
またいつもの光景だ。
あなたのいる、あの日のもの。
何もかも、自分の体さえも、全てがあの日の通りに違わず動き、
五感もその全てが正しいと言う。
いつも通り、いつもと同じ、
空の色、陽射しの眩しさ、肌を撫でる風、この土地の匂いも、あなたの温かさも、
全てがあの日のまま、何一つ違わない。
その終わりも一緒、陽は傾き、冷たい静寂、闇の帷、そしてあなたの体温も遠ざかり、ああ、やがて楽しい時間が終わる。
またもう一度、この光景を見れる時が来るだろうか。
自分の体、なんとか動かせないだろうか。
もう一度、あなたの手を握りたい。
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夢が醒める前に
どうせまた小言でももらうのだろう。
一人で来るよう伝えられた場所への道のりは、ただ、憂鬱だった。
相手が異性ゆえに周囲には茶化されるが、自分とあの人はそういうのではない。ただ上下関係が築かれているだけである。
そこまで考えて、溜息一つ。
あぁ、でもこうやって呼び出されるのは、中々珍しいな。
今日はどうしたのだろうか。そういえば、声音がどこか、焦りを思わせたような。
あの眼差しもまた、いつも通りのようで、しかし真剣味が滲んでいて——
……待っているであろう、あの人の姿を思い浮かべる。
……どうして自分は、手に汗をかいているのだろう。
どうしてこの、速度を上げた心臓の鼓動が、こんなにもうるさいのだろう……!
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胸が高鳴る
きみがいないのに、なんで世界は素知らぬ顔して回ってるんだろう?
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不条理