《星空の下で》
地球の反対側の朝を想像する 焚き火する 野宿する フクロウが静かに狩りをする ホトトギスの声がきこえる あのひともいまおなじく北極星を見ているはずだと信じる 宇宙ステーションの外壁のトラブルの状態を目視で確認する 地球の昼を思い出しながら宇宙食を口にする スペースデブリは今日も無意味に地球を周回している 漂流する筏の頭上の満天の星 南十字星を見て、南半球を実感する
《それでいい》
明日から学校にいけなくなったとしても セロリとニンジンがどうしても食べられなくっても お空に行ったママに会いたいと大泣きしても 大事なぬいぐるみを何処かに置きわすれてきてしまったとしても 世界中から後ろ指を指されても 水溜りを飛び越えそこねて真っ白な靴が大惨事になっても くすねた駄菓子を握りしめて立ちすくんでいたとしたも
《幸せに》
幸せになりたい 幸せにしてあげたい どうせ願いが叶うならなら幸せに 幸せにヒビが入る 幸せに戸惑う 幸せに水を差す 幸せに影が差す 幸せに輪をかける 世界中が幸せに 喜びに目出度さに幸せに 鬼に金棒的にいうと、幸せにマシュマロ 幸せに子どもの子で幸子です
《何気ないふり》
湯のみのとなりの急須、注ぎ口がちょっぴり斜め向こうにむいてる 後ろ髪ひかれる素振りも見せまいと通り過ぎる土用の鰻屋 バレンタインデーは平常心で乗り切る バレてはいけない秘密を抱えて生きていることそのものが極秘情報 障害を悟らせまいと頑張る同僚の弱点については見て見ぬふりを通す 桜の開花を告げるニュース番組を見もせずスマホをいじりつつ、ひそかに和む口元
《ハッピーエンド》
物語の結末はおのれの手で書き変える シンデレラはその後シングルになって自分探しの旅に出る ボロボロの羽根で、なおも未来にはばたく夕鶴 ひっそりと風化してゆくかさこ地蔵 究極はやはり、畳の上で死ねること