《My Heart》
私の心臓 それがしの心の臓 ボクのハート わたくしのこころ 我輩の情意 拙者の心底 オレの気持ち 妾の胸の裡 自分の胸部にある循環器のひとつで肝心要の臓器 アタシの胸に手を当ててみて、ドキンドキンと脈打っているところがそうだよ
《ないものねだり》
いつか白馬の王子様が的な夢 完璧な平和な世界 円周率の最後の桁の数字 育児の手間のかからない赤ん坊 毎日誰かが温かい手作り料理を出してくれる暮らし 原発が壊れる前の福島 マイクロプラスチックの漂っていない海 酸素が無くても生きていける体 理想の職場 あらゆる人間関係におけるもつれがすべて消滅すること 神様 人生をやり直したいから異世界に転生することにする
《好きじゃないのに》
離婚せぬままなんとなく夫婦でいる中高年 家族のため、お金のために割り切って働いてる 残すのがゆるされない給食の牛乳 ホントは紅茶党なんですと切り出せぬままいただく訪問先のブラックコーヒー おばあちゃんがまたあのパイを送ってきた 愛想笑いしながら受け取る旅行土産のお饅頭 PTAの役員 投票先の見い出せない選挙 道端で子猫に慕われてる動物苦手君 暖かくなると勝手に我が家を訪問してくるGには殺虫剤を
《ところにより雨》
それってつまり、微笑みうつ病ってこと 雨男すぎて室内でもこうもり傘をさしている 植木鉢に如雨露からやさしい雨が降るよい日和 こっちでは満月が綺麗だよ、君の方ではどうだい……降ってなければいいんだけど
《特別な存在》
ばいきんまんにとってのアンパンマン 落語家の手許の扇子と手拭い 歴史上の業績はともかくファラオといえばツタンカーメン マトリョーシカのなかのいちばんちいさい子 卵の黄身 目を閉じてベルフィルを振る帝王カラヤン バッハと平均律 ゴジラのあのメロディ フレンチだけどやっぱり箸で 劉備には諸葛亮 ゴホンといえば龍角散 桜をてらす春の日差し ツバキの受粉を手伝うメジロ ミツバチが一生のうちに生産するハチミツはティースプーン1杯分 おにぎりには紀州梅がよく似合う 紅白は見なくても、一年の締めくくりは必ずゆく年くる年で 冬は餅を食うための季節 かけるだけでたいていのものを旨くしてくれる醤油は偉大