《特別な存在》
ばいきんまんにとってのアンパンマン 落語家の手許の扇子と手拭い 歴史上の業績はともかくファラオといえばツタンカーメン マトリョーシカのなかのいちばんちいさい子 卵の黄身 目を閉じてベルフィルを振る帝王カラヤン バッハと平均律 ゴジラのあのメロディ フレンチだけどやっぱり箸で 劉備には諸葛亮 ゴホンといえば龍角散 桜をてらす春の日差し ツバキの受粉を手伝うメジロ ミツバチが一生のうちに生産するハチミツはティースプーン1杯分 おにぎりには紀州梅がよく似合う 紅白は見なくても、一年の締めくくりは必ずゆく年くる年で 冬は餅を食うための季節 かけるだけでたいていのものを旨くしてくれる醤油は偉大
《バカみたい》
徐福が不老不死の仙薬を持ち帰ると信じてただなんて 甘いものをやめたらあっというまにスリムになれたんだが、なんであんなにハイカロリーな食べ物を貪るのが普通になってたんだろう 歴史に名前が残ってる理由が古池に蛙が飛び込んだら水音がした的な当然のことを俳句に詠んだからだとか 国家的危機が来たら突如として政治家たちが覚醒して……とかゆう妄想 天文学的なインフレ下での一万円札の札束 好きな人のでもやっぱりオナラは臭いんだと知った日 焼くべきサツマイモも無いのに垣根の曲がり角で無駄に落ち葉で焚き火している どうして光源氏なんかを好きになってしまったんだろう 今日よりも明日、明日よりも明後日にはもっと素晴らしい未来が来ると疑ってなかったのに 背中まで伸ばした髪をスッキリと切り落としたらウソみたいに頭痛と肩こりが解消したりして
《二人ぼっち》
遥か高い空の上、練習機で憧れの教官と この長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せてゆっくり下ってく 大きなお腹で独りティータイムの午後 囲炉裏の片隅で灰に突き刺さる火箸 アシタカとヤックルが何処までも駆けて行く 夫婦岩 御仏に見守られつつ座禅する 夕暮れのベランダ、干されっぱなしの靴下一足 右と左、平行線のまま錆びていく廃線のレール
《胸が高鳴る》
日の丸の小旗を振りながら出征兵士を見送る少年少国民 憧れの学校の正門を初めてくぐる日 新しい靴を履いてお出かけ しし座流星群の夜に屋上で君と サプライズの発動待ちの仕掛人 3日前から並んでやっと手にしたドラクエ 新種を発見したかもしれない瞬間 イチロー来校 そうだ告白するなら未成年の主張で、と決めた夜 初めて焼いたケーキ、オーブンを開ける瞬間 たとえ気のせいだとしてもリーマン予想を解く手掛かりがつかめたような気がしたとき
《理不尽》
バリバリ仕事をしたいのにママだから早く帰宅してあげなきゃと親切をほどこされる すこしでも多く子どもの相手をしたいのに残業しないようなヤツは昇進できないぞと冗談めかしておどされる みんなで赤信号を渡ろうっていうのにどうしてお前だけがついてこないんだとキレられる 隕石が屋根を突き破り我が家だけが被害を受ける どうしてできないんだと叱られたからできない理由を詳しく述べたらさらに叱られた そこの辺を歩いていただけなのにキモチワルイと叩かれた 攻撃されたので液を出して対抗したらクサイと非難された ストローを刺して血を吸っていたら潰された 食料を見つけたので全員で行列して運んでいたら多数の仲間が踏まれた 何度も理不尽な目にあわされてさすがに限界がきたので怒ったら怒るなんて暴力的だと当のソイツに諭された