《怖がり》
夜中にトイレに行くのを回避するためのルーティンが寝る直前までガチガチに組み立てられている 竹筒に引き籠もるかぐや姫 昼寝の前に「おしいれのぼうけん」を朗読するのはやめてほしい、と連絡帳に書いてもらった園児 押入れに近寄りたくないのはねずみばあさんの存在をいまだに恐れているから 沈下橋から淵に飛び込めない 「あなたの知らない世界」は視聴しない限り永遠に「知らない世界」のままだと力説する 日本人形については髪の長さからは目をそらすようにしている 飛び込み営業ほど恐ろしい労働形態はない 極力右折はしないルートで走行する
《星が溢れる》
例えば夜光虫の打ち寄せる渚、ホタルイカの押し寄せる夜の海 炊きたての新米の艶 プラネタリウムでのデート 七夕の夜の素麺 群生するバイカオウレン それを見つめる植物学者の瞳 買ってきたばかりのグラスビーズを開封した瞬間 宇宙ステーションで過ごす日々 屋久杉から見上げた夜空 ニンジンが苦手な子どものためのカレーのなかのオレンジ色の流星群 暗黒星雲の懐に微睡む生まれたての星々
《安らかな瞳》
神の御許に集うエンジェルたち お昼寝から覚めたばかりの園児 母乳の満ち足りた嬰児 帰宅したご主人様の膝の上のわんこ 安楽椅子で編み物するおばあちゃん 懺悔室から出てきた信者 長期逃亡していた指名手配犯が手錠をかけられる瞬間 記憶の中の今は亡き人
《ずっと隣で》
電信柱の足元のポスト 助手席にいる代行運転業の相棒 居眠りしているもふもふ こっちを見もせずスマホばかりイジっているヤツはムカつく 金色の稲穂には案山子 空き家になったままのお隣さん 箸立ての菜箸とお玉とフライ返し 所定の位置に整然と並んだクレヨン お内裏様とお雛様 同じ日に種が実ったひまわり 今年も見事な並木のサクラ
《もっと知りたい》
もっと知る方法
・ルーペを用いる
・メス等で細かく切り分けていく
・難しい公式を用いる
・図表化して分析する
・アンケートを実施する
・徹底的に採集して標本にする
・実際にやってみる
・ためしに食べてみる
・超高速のカメラで撮影した映像をスローモーションで再生してガン見する
・タイムラプスで撮影した映像をパラパラマンガ的に再生してガン見する
・とりあえず図鑑を読む
・ググる
・辞書を1ページずつ食べる
・想像で補う