自分は、まだ子どもで幼いのに、大人のあなたに恋をしてしまいました。
待っててください、すぐに大人になって、あなたに告白してみせます。
自分は大人になりました。無事、あの人とお付き合いすることができました。今日は初デート。
待ってて、今すぐ行くから。
自分は一児の母になりました。あら、もうこんな時間。
待っててね、今迎えに行くからね。
そして、あなたも。
自分はおばあちゃんになりました。子は今でも元気に育っています、頑張っています。ですが、あなたの様態はだんだん悪くなっていきます。
もう少し、もう少し待っててください……せめて、この子の晴れ姿を見るまでは、一緒に生きててください。
〜待ってて〜
伝えたい。
私のお腹の子に。
みんながたくさん待ってるんだよって。
早く生まれてほしいって。
楽しみにしてるって。
もちろん、私も思ってる願ってる。
だから、無事に産まれてくるんだよ――
〜伝えたい〜
私は今日、
この思い出の詰まった場所――いや、校舎で、
鳥になる。
……あ、いや、リアルの鳥じゃないよ?
私自身、そんな羽ばたける人間じゃないから。
あーあ、ほんと、ここにはお世話になったよ。
もう廃校舎だけどね。
今、あいつら何してんだろ。
私の顔見て、陰口言って。
私の物隠して、壊して、散々笑って。
……あぁ、時には、校舎裏で脅してたよね。
『お金ちょーだい』って。
今も誰かにそんなにくだらないことしてんのかな。
まぁ、今の私にとってはもうどうでもいいんだけど。
もう、この世から消えるんだし。
バイバイ、ほんのちょっとの私の友達。
じゃあね、私を育ててくれた校舎。
私は屋上から飛び立つ。
そして、雲ひとつない大空へ……
〜この場所で〜
誰もがみんな、あなたと同じなんじゃない。
人それぞれ個性があるから、
人間って、そうでいいと思うんだ。
だから、あなた基準で決めないで欲しい。
文句を言わないで欲しい。
〜誰もがみんな〜
「ねぇねぇママ!きょうね、こうえんではなたばつくったの!!」
シロツメクサとたんぽぽとわたげ!
きれいでしょ〜
「ねぇお母さん、これプレゼント。いつもありがとう」
カーネーションの花束。
いつも頑張ってるお母さんに、サプライズだ。
驚いてくれて、良かった。
「……お母さん」
お母さんが一番大好きな向日葵の花束。
空の上でも元気にやってるかな。
どうか、いつまでも私を見守っていてください。
それに応えるように、向日葵がさわさわと揺れた。
〜花束〜