「ねぇ、××……今日は空に三日月が昇ってるよ。きれいだね」
そう言っても何も返ってこない。ただ、そばにはいるんだ。安らかに眠っている君が。
……いったい、いつになったら戻ってくるんだい? 僕だけ生きているのは辛いよ。寂しいよ。君と一緒じゃなきゃ――
『お前は、俺がいなくたって大丈夫だ』
「――!」
『周りを見てみろ。昔とは違うんだ。今のお前の周りには、たくさんの仲間がいる。だから、生きろ〇〇。そして、また明日も、平和に――』
なんて声は、すうっと僕の耳を通り、身体中を巡った。そして最後に、聞こえた。
俺がいつまでも見守っておいてやる。俺が見れなかった分を、お前が見るんだ。そして、この先もずっと切り開いてくれ。未来を。
「××……」
涙が溢れ出て止まらなかった。何とか止めようと、僕は上を見上げる。ほっそりとした三日月の周りには、たくさんの星が輝いていた。支えるように。
――永久に時が流れるのなら、みんなが明日を望むのなら、前に進もうとするなら、いつかこの月だって。
〜三日月〜
「見て!お兄ちゃん!!シャボン玉いっぱーい!」
「うん、そうだね」
太陽の光に照らされて、虹色に光り輝くシャボン玉を見て、妹が笑う。虹色、って言ったけど、ちゃんとしたきれいな虹色じゃなくて、赤が強いやつとか、青が強いやつもある気がする。
「あっ、割れちゃった」
「大丈夫、ほら、こうして僕が吹くとね」
またたくさん出てくる……
「――今も頑張ってるのかなぁ、おもちゃ屋さん」
一人、土手に寝っ転がっている自分。妹はおもちゃ屋さんで働きたいと言っていた。たくさんの笑顔を見たいからって。
ふと、どこからか子供のはしゃぐ声と多くのシャボン玉が飛んでくる。今日も自分の働きで、たくさんの笑顔が見られたのかな、なんてちょっと微笑ましく思った。
〜色とりどり〜
私は今日、初めて雪を食べた。
雪って、真っ白で綺麗なのに、色々と不純物が入っているんでしょ?
まさにその通りだって思った。
あれ、たくさんの汚いものが混じってて食べるもんじゃないって思った。
今すごくお腹が痛い。
……でも、仕方ないでしょ?
雪がずっと一緒にいるって言ってたのに、約束破ったから。
でもこれからは違う。
ずっと、ずっとずぅっと一緒だからね。
〜雪〜
僕は、『君と一緒』なら、なんでもできるんだ!
――うん、知ってる。知ってるよ。
だから、今日もあたし、頑張るね。
最後にもらった、古びた手紙に唇を落とす。
「あたしも、『あなたと一緒』じゃなきゃ、なにもできないんだもの」
あたしは今日も秘密の研究所へ行く。
あなたを生き返らせるために。
失敗しても、あなたはあなたなんだもの。
あたしは一生そばにいるわ。
〜君と一緒に〜
「今日は晴れ、か」
冬は嫌い。でも晴れているからまだマシ。これが曇りだったり、雨だったりするのなら、気分が下がる。それより、吹雪だった場合は、もう最悪。
「今日はあの人の命日でもある」
一人、墓の前。名前も知らぬ白い花を持って、ひっそり佇む。あの人がいなくなってから、私は心を閉ざしてしまった。周りと関わるのが嫌になってしまった。
――また、ひとりぼっち。
「……誰か。もう誰でもいいよ……なんならいっそ」
お天道様が、私の心を溶かしてくれてもいいんだよ?
あの人とそっくりだから。
〜冬晴れ〜