【#18. 終わらない夏】
夏休みが終わりに差し掛かっている
今年も夏休みさんは期待を裏切らず、
気づいたら残り数日
高校生、初めての夏休み
周りの運動部は合宿だの休みがないだの
忙しそうにでもキラキラした生活を
過ごしているのを横目に
私は周りの人よりは遊んではなかったけど
軽音部のライブに出たり、友達と旅に出たり…
夏休みさんには充実した休みを過ごさせてもらった
家にいることが少なかったから
部屋の散らかりようを見て頭を抱える
セミの鳴き声に耳を集中させていたら
見覚えのあるような、ないような、
そんなワークやプリントが出てきた
私の頭ではセミの鳴き声が大きくなっていき
熱くなる
何故だクーラーをかけているのに
私は笑顔でシャーペンを握る
やっぱり夏休みさんは私の期待を裏切らないようだ
私の夏休みはまだまだ終わらないようだ
【#17.またいつか】
暑くて汗がベタベタして気持ち悪い。
道端に地面で踏ん張って空を見上げるひまわりが羨ましくてたまらない。この辺りでは山ばかりだから都会と違って暑いんだよ、と一学期の終業式に転校してきた葵に言う。
「夏は好き?」
そんな葵は夏生まれだからなのだろうか。目を輝かせながらそう私に聞いてきた。
「ここら辺じゃ蝉が五月蝿くてゆっくり眠れないから嫌いだね。」
「そっかぁ、、、、」
葵は何処か落ち込んだような顔をして俯く。
言いすぎただろうか。でも嫌いなものは嫌いだ。
すると葵は私の手をとって急に走り出した。
「ねぇ、、ね、ねぇ、、、、
ちょっと!」
「あ、あぁごめんごめん笑写真部の君には少し早すぎたかな?笑」
「うるさいなぁ。おかげで汗だくだよ。最悪。
んで、なんで海まで来たの?」
そう、葵は私を海まで連れてきた。
「夏を好きになってもらうため!」
パシャッ
「え、あっちょっともう、濡れたじゃん!」
「これが夏の楽しみ方だよ〜」
そう葵は何かを企む顔をして近づいてきた。
それからは水面の弾ける音が鳴っていた。
それから葵は私をこの島の山の神社に連れて行った。
そうして学校の宿題もしつつ、葵は夏の楽しみ方を毎日教えてくれた。
そんなある日、島で行われる1年に1度の夏祭りに誘われた。その祭りは、この島で伝えられている山神である珠雲(たまくも)様と呼ばれる神様に礼し、今後また1年、島を守ってくださいとお願いする行事である。
そして夏祭り当日。島全体が活気に満ちていて、毎年祭りのときは出店の手伝いばかりしていたから気づかなかったけれどいい景色だ。
そして、祭りの目玉である花火が上がる。
花火を見ながら葵は
「夏、楽しいでしょ?」
「うーん、悪くはないね。」
「明日から学校だね。葵も明日から本格的に友達作りできるじゃん。」
「そうだね、。」
「どうしたの?」
今思えばなんだか様子がおかしかった。
すると君は急に神社の方へ走り出していった。
何か用事でもあったのだろうか。また明日会えるかと思い、自分も家に帰ろうとしたとき、
「またいつか!」
祭りが終わり、ガヤガヤした声を一瞬で消して
ドロドロとした暑さを感じさせない、
元気さでそう言った。
いつかっていつなんだろうと思いつつ、
私は振り返って返事をした。
「うん、またいつか。$€々€<%。
_____あれ?$€々€<%って誰?」
返事をしたはずの私の声は、私が夏を好きになったきっかけだけを残して神社の方の山へ消えていった。
道端にはそっとキラングサとワスレナグサが夏の生ぬるい風に揺れていた。
【#16. 届いて…】
届いて欲しい思いはいつまでもさまよって
届かない
でも私は
どうしても届いて欲しいから
自分から届けに行ってやる
【#15. あの日の景色】
毎日同じ時間に起きて
同じように朝ごはんを食べて
自転車と電車に乗って
授業を受けて
同じ時間に帰って
寝る
白紙のノートに
テンプレート化した行動を
記しているような毎日
だけど日々めくっていくページの中に何か
色が加えられる瞬間があったりする。
それは予期せぬことの方が多い。
だから、その時の色は溢れ出した青や黄、赤とか...
そんな時脳内で前に書いた記憶のノートを出して
ページをめくって喜怒哀楽。
その時の私はただただ呆然と
毎日ノートに同じことを記している
だけかもしれないけど
戻って書き足すことが出来ないことを
わかって欲しい。
と日々呆然とノートを書いている自覚がある
私が言うのも可笑しい気がするが。
私は戻って書き足せばよかった
と思ってページを
消しゴムで消して
さらに消した跡も残って
ぐちゃぐちゃになって
溢れた雫でボロボロにするなら
記憶のページを作るなら
私は綺麗なノートを作れる人になりたいと思う。
【#14. 波音に耳を澄ませて】
「海だ〜!」
そう叫んで一目散に駆け出して行った
あなたの背を私はうしろから追いかけた
走り疲れた私たちは
目の前に広がる揺れ動く
茜色と紺色が混じった風景をお互い静かに見ていた
「この海みたいになれたらなぁ」
とあなたは呟く
この時間だけ今までの人生を
白紙にすることができていた
一定の音をたてて
揺れて砂を撫でる波と
綺麗なグラデーションのパレットの空は
どこまでも続いていて
どんな私でも受け入れてくれる気がして
すべてを白紙にして忘れて、忘れさせて
あなただけを思いながら
来世は白い波になりたいと思った