テーマ“きらめき”
小学生の時、とても人気がある男の子がいた。
明るい訳でも、暗い訳でもなく
優しくて運動神経が良くて頭も良い。
クラスメイト全員が彼の事を好きだった
(恋愛感情の有無は別)
クラスの男の子の中で、彼は一番身長が低く
可愛がられていて、クラスで【花いちもんめ】とか言う遊びではすぐに
彼の取り合いになっていた。
私も、そんな人気者の彼が好きだった。
私みたいな、人見知りでネガティブで
目立ちもしない(否、悪目立ちはしていた気もしないでもない)、そんな人にも
分け隔てなく言葉をかけてくれる。
そんな優しい人だった。
場所が場所なら、彼は芸能人になっていたんじゃないかと、そのくらいの
オーラ、輝きがあった。
だから、殆どの人は彼を『こーちゃんは、皆のもの。』
そう言っていた。
『抜け駆けは許されない』
そんな暗黙のルールがいつの間にかできるくらい
彼は人気だった。(本人は気づいていない様子)
彼のきらめきが増していくに連れ
周りの暴走も増していく。
私はいつしか、彼になるべく関わらないように
なっていった。
学年が上がり、彼と別のクラスになったら
彼の噂は全く耳にする事は無くなった。
たった、2クラスしか無いのに。
隣のクラスの事なのに。
彼の噂をしないのは、彼の周りにいる人達が怖いから。だと思う事にした。
運動会で、久々に見た彼は、やっぱり
凄いきらめきを放っていた。
同じクラスだったらきっと、彼の眩しさに、浄化してしまいそうなくらいだと思った(気のせい)
それと同士に。ああ、やっぱり私は彼を好きなんだなと、そう理解した。
好きだからこそ、周りの人よりも、きらめいて見える。
多分そういうこと。
テーマ“雨に佇む”
天気予報では雨だなんて言っていなかったのに
突然バケツをひっくり返したような雨が降ってきた。
周りがワーキャー言いながら
雨宿りしたり、折りたたみ傘を開いたりしている中
私はただ、その場に立ち尽くした。
あー…雨だ。
早く帰らないと。
家まで、1.5キロ。
車は無い。折りたたみ傘も無い。
そんな事を考えながら、ただただ佇む。
周りの人は、おかしな人を見るような目で見ている。
雨宿りしたとしても、雨が止むまで
其処に居られるほど時間は無い。
何処かに行くわけでもなく
ただ帰るだけだから、電車やバスに乗る訳でもなく
ただ歩いて帰るだけだから
家に帰ったら着替えられる。
此れが冬だったら、流石に濡れて帰ろうとはならないけれど
夏の暑い日、炎天下からの土砂降りだから
何も気にせず家へと向かう。
漫画やドラマみたいに
下着が透けて見えることは無い。
肌に纏わり付く嫌な感じはするけれど
そもそも、夏とは言えど
そこ迄薄い素材の服は着ない。
人通りが少なく、誰に見られるでも無い道を進む。
途中、立ち止まる。
雨は止む気配はない。
虹が見られるわけでもない。
ただ、周りから見たら
憐れな人間が雨の中、佇んでいるだけ。
雨の中、ひた進むだけ。
テーマ“海へ”
こうも暑い日が続くと
どうしても涼しい場所へと行きたくなる。
海風で涼もうと、海へと向かった。
それなのに、思った以上に海風が強く
飛ばされそうなくらいだ。
これでは涼むより、飛ばされない事で体力を使う。
海へ来たは良いけれど
とても、複雑な心境になってしまっている。
海に背を向け、海から離れる。
後ろから漂う潮の香り。
やっぱりある程度の距離をとったほうが
心地よいのかもしれない。
テーマ“空模様”
最近空を見上げると
所々晴れているだけで
あとは曇り。
私の心も、私の表情も同じ。
時々晴れるけれど、基本無。
ことごとく、無。
雨みたいに泣くわけでも
晴れみたいに笑う訳でも
雷みたいに怒るわけでもなく
無。
楽しくない訳でも、悲しくないわけでも、辛くないわけでも、イライラしないわけでも無く。
表情を作ることに疲れてしまった。
それだけ。
基本、無。
だけれど、完全に無な訳ではないから
その時は、笑える。泣ける。怒る事ができる。
その部分だけ晴れ。
のような気持ち。
テーマ“鏡”
鏡にまつわる怖い話はたくさんあるけれど
私が知ってる中で一番怖い話は
夜な夜な、鏡に向かって
「この世の中で一番美しいのは誰か」
と問いただす(自称)世界一美しい女の話だ。
まあ、最終的には自滅するのですが
世界一美しかったからと言って何なのだろう?
見た目の美にこだわり過ぎて
本来の美しさを見失っていたのではないか。
人を羨み、人を妬み、人を蔑む姿は
誰が見ても美しさとはかけ離れているはず。
…とはいえ、正直、この物語に出てくる
鏡に最も美しいとされた少女と、
その少女を妬んだ女は、歳が離れすぎて居て
信憑性が無いのは気のせいだろうか。
人はそれぞれ、その年代により美しさが異なると思うのだが。
まあ、鏡がロリコンだったのかもしれない(極論)