付き合い始めの頃
わたしはあなたよりお姉さんだから
あなたを甘やかすことが多かったね
まあ、あなたも猫かぶってたっぽいし
わたしも気の利くお姉さんのフリしてたし?
今ではあんな甘い時間 あんまりないよね
てれちゃうよね
膝枕して あなたの髪を ゆびで梳かしてる
なーんてねぇ
◇子猫◇
わたしが働いてたBarで
好意を寄せてくれていたあなた
お互いに 店員とお客さん
その境界線が縮まることなく
仲良くしていた
もともとBarに付いているあなた
本気か、あわよくばか
わたしには分からなかったけど
たまに向けられる熱視線に
悪い気はしなかった
いつも優しくて 甘やかしてくれたあなた
Barを辞めてからも
あなたの印象はそのままだった
何年も経ってから ふらっとBarに立ち寄った
知ってる常連客さんはひとりもいなかった
オーナーにあなたを呼んでもらって
ひさしぶりの再会
また あなたの優しい笑顔が見れると思って
話しかけるわたしの声色は
二言、三言めには 海底に沈んでしまった
あなたの目は わたしに語った
ううん、なにも 語ってくれなかった
◇あきかぜ◇
張りぼてで一見役に立たない
ように見えても
環境が変われば 視点を変えれば
そうでもないときもある
ペンギンだって
海の中では自由自在に
飛びまわってるでしょ?
適材適所で 生きていたいよね
◇とべない翼◇
わたしが最期に言った言葉
今でも後悔してる
末期だったのに
「退院したら、色んなところに行こう。体力もつけなくちゃね」
その晩 妙に寝付けなくて
ソファからベッドへ移ったとき
意識レベルが低下したので
病院まで来てくれますか
いつもなら部屋の簡易トイレ使ってくれてるんですけど
日付けが変わる頃共同トイレに向かわれて
そのとき倒れられて‥
そのあとベッドで落ち着いたんですけど
1時間後様子を見に行ったら‥
わたしが最期に言った言葉
本当に今でも後悔してる
あんなこと言わなかったらって‥
◇脳裏◇
好きだった人がいた
ずっと片思いだった
でも 連絡先を聞かれて
メールのやりとりをするようになった
とっても嬉しかったのに
わたしに欲が出て
ヤキモチと早とちりで
怒ってしまったことがあった
そのあとは会うことも 連絡を取ることも
できなくなった
もう戻れない後悔のなか
どうしても一目会いたくて
雨上がりの気温が下がった20時頃
あなたが退勤して通るであろう道の
電信柱に
潜んで
待ってる
◇意味がないこと◇