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7/23/2024, 11:44:05 AM

花咲いて

俺は桜の木に向かって願った。「あいつが死ぬ前までに桜が咲きますように」と。俺の彼女の美琴は先が長くなかった。自分で呼吸が出来なくて今だって病院で人工呼吸器をつけて生活している。そんな美琴が俺に「ねえ永久私の最後のお願い聞いてくれる」と言った。俺はその時涙が出そうになった。「最後なんて言うなよ」と言うと美琴は震えた手で俺の頬をそっと優しくなでた。「私のお願いはもう一度永久と桜を見ることだよ」俺はそう言われると一目さんに病室を出た。そして桜の木の前に立つと全力でお願いした。今は2月。花が咲かないのは馬鹿な俺でもわかっていた。それでも俺は美琴の最後の願いを叶えてやりたかった。でも美琴は桜を見ることなく短い人生に幕を閉じた。俺は今でも昔美琴と撮った写真を見て思う。あと数日生きていれば一緒に桜が見れたのにと。

7/22/2024, 1:08:13 PM

もしもタイムマシーンがあったなら

もしもタイムマシーンがあったなら私は過去に行くだろう。昔泣くことしかできなかった自分に「大丈夫だよ」と伝えたい。どんなに助けを求めても誰もが見て見ぬふりをした。そして大人は全員通り過ぎていった。汚いものを見るような目をして。それからだ。口が悪くなったのも態度が悪くなったのも自分を守るために仕方がないことだった。毎回「その態度は何だ」と言われるが、見て見ぬふりをしたお前らが悪い。でもそんな私を変えてくれた。私が先生に説教をされて機嫌が悪かったとき幼馴染のあなたが「本当にそれが素のお前なの」と言った。その時私は自然に涙が出た。ずっと気づいてほしかった。苦しくて辛かったときに求めていたものをあなたがくれた。あなたは私が泣くとおろおろしていたので私はすぐに涙を拭って言った。「ありがとう」と。

7/19/2024, 1:48:03 PM

視線の先には

視線の先にはいつも君がいた。でもあの日から視線の先には君ではなく暗闇が待っていた。君はどこに行ったのだろう。そう思って暗闇の中に入っていった。でも周りは何も見えなくて光も君も見えなくて僕は何もかも失った気がした。君とこの暗闇で再会できたら僕はホッとして君を抱きしめるだろう。でも今は自分の心に木枯らしが吹いている気がした。いつか君に再会できる日を信じて僕は今でも暗闇の中を歩いている。

7/18/2024, 12:12:21 PM

私だけ

私だけみんなと違う。何が違うのかというと目の色が違うのだ。普通の子は黒や茶色だがそれに対して私の目は片方が赤でもう片方が青だ。そのことで昔からいじめにあっていたし、家族にも気持ち悪いと言われてきた。だから慣れているんだ。でもなぜだろう。あなたには言われたくなかった。幼馴染の君には。その日から私は片方の目に眼帯をつけることにした。すると気持ち悪いと言われることも少なくなってきた。私はその時思った。なぜ人は見た目で判断をするのだろうか?それが差別というものなのか私にもわからない。だからこれから知っていけばいいのだろう。そう思い私は前に進んだ。

7/15/2024, 12:03:02 PM

終わりにしよう

「もう終わりにしよう」その言葉で私は固まった。どうして私のどこがだめなのそう聞きたかったが、私は言葉を飲み込んだ。なぜか声が出なかった。彼にも理由があるんじゃないか。そう考えると問い詰めることができなかった。あの日から数週間後私は小さな頃からの幼馴染の颯に会った。誰でもいいから愚痴を聞いてほしかったのだろう。颯が私の愚痴を聞きながらため息をついた。「あんなやつ忘れれば」そう言って颯は指を差した。差した方を見ると元カレだった。私は「泣きそう」っと思った。するとそれを読み取ったかのように颯がフワッと私を抱きかかえた。私は戸惑ったが、颯に身を任せた。颯は私をバイクに乗せるとこう言った。「俺の背中だけ見てろ」私は颯の上着をぎゅっと握ってこくんとうなずいた。元カレとすれ違うとき私は思わず目をつぶってしまった。颯は私の頭をポンポンと慰めるように優しくなでた。その手は暖かく、大きかった。私が「ありがとう」と言うと颯はボソッと「俺のほうがあいつよりお前のこと好きだっつーの」私はその言葉がはっきり聞こえたが、「えっ」と聞き返した。すると颯は「なんでもない」と言って誤魔化した。その後ろ姿は耳まで真っ赤で私は思わず笑ってしまった。その時思った。あの時あいつが「終わりにしよう」って言ってくれて良かったのかもしれない。でもあいつには感謝しておこう。あいつのおかげで本当の恋に気づけたんだから。

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