練習

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10/12/2023, 11:00:52 PM

 人気のない廊下にパタパタとスリッパの音がしたかと思うと、部室の扉が開いた。
「やっほー」と入ってきた人物に、
「珍しいね」と声をかけた。「今日はバレー部も生徒会もないんだ?」
 彼は三つの部を掛け持ちする忙しい人物だ。当然一番暇なこの部室には、月一来るか来ないかと言ったところ。
「そうそう。バレーは設備点検で体育館使えないから休みになって、生徒会の方も今日俺しかいないからやめた。でもここもいつもより人いないね」
 そう言って部室をキョロキョロと見渡す。ここにいるのは俺と彼を含めて三人。あと一人はいつものように椅子で昼寝をしている。
「二年は?」
「ゲームの発売日だから帰るって」
「なるほど」
「俺も課題したら帰ろうかと思ってたんだけど」
「そうなの?」
「せっかく三年男子揃ったし、フードコートでも行く?」
「いいね」
 流れるように話が進む。学校の近くにあるフードコートは、うちの高校生の溜まり場になっているのだ。
「……ということになったけど」寝ている人物に聞こえるよう少し声を張り上げると、
「勝手に話を進めるな」と彼は薄目を開けた。
「起きてたんだ」
「やっほーがうるさいんだよ」
 面倒くさそうに身体を起こすと、顔にかかった前髪を払う。人付き合いが苦手は彼は、友達同士で駄べるのが好きではなく、普段こういうのは断るタイプだ。しかし、
「嫌なら奢るよ」と言うと、冷めた目で、
「お前に借りをつくると面倒だからいい」と却下された。それから鞄を手に取って立ち上がった。
「準備万端だね」
「気が向いただけだ」
「じゃあ気が変わらないうちに……」
 俺もすぐに机の上に広げていた課題をしまって、三人揃って学校を出た。
 
#放課後

10/10/2023, 9:31:20 AM


 君の黄金色の髪の隙間を風が吹き抜ける。一本一本が太陽の光を反射して輝く様は、まるで実り豊かな麦畑のようだ。この世界の光景が、隅々まで同じように、美しくあればいいのに。
「あっ」
 君が何かに気づいて、私の方を振り向く。
「今の風は、わかるよ」
 そう言って、ふふっと穏やかに笑う。
「君は楽しいんだね」
 また一層強い風が、二人を包み込む。
 私が心躍る時、風もまた私に応えるのだ。

#ココロオドル

10/8/2023, 12:54:07 PM

※今日は思いつかないので自分のこと

 趣味で一次創作をしていますが、ここ数年書けないので練習中です。「私」とか「あいつ」とかで名前を伏せていますが、いつもそのオリキャラの小噺を書いています。3作品あって、彼らはそのどれかの登場人物です。
 
 ①高校生たちのお話
 ②異世界ファンタジー
 ③とある二人の日常のお話

 総勢100人くらいいるので、日によってだいぶ雰囲気が変わります。お題から頭に浮かんだ子で書いています。気が向いたらキャラ名くらいは出すかも知れません。


#束の間の休息

10/7/2023, 10:34:36 AM

 容器の蓋が開かない。腹が立つので地面に叩き付けるか、あるいは剣で叩き割ろうかと思ったが、そんなことをすればあの方に怒られる気がする。
 仕方がないので馬鹿力のあいつを呼ぶことにした。
「お前俺のことを便利な道具か何かだと思ってるよな?」
「当然」
 使えるものは使って何が悪い。
「早くしろ」
 はあー、と大きなため息が聞こえる。
「ふんっ」あいつが思いっきり力を入れて蓋を回すと、ミシッ。開くと同時に、妙な音がした。
 あいつは自分の手の中のものを恐る恐る覗くと、私に向かってバツが悪そうに言った。
「……本体にヒビが入った」

#力を込めて

10/7/2023, 3:08:44 AM

 君が俺のことを忘れてしまった時、絶望して何度も"死"が頭をよぎった。それでももう一度君に会いたくて、どうしても諦められなくて、生きながられた。そうしたら神様が、俺の願いを聞き入れてくれた。でも今の君は、前の君とはほんの少し違う。
「髪伸びたね」
「似合うだろ?」
 君は何だか得意気だ。

#過ぎた日を想う

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