あなたが通ったその時に柔軟剤がふわっと香る。
それが好きだった。
いつの間にか私は君を待っているようになった。
いつもの時間にあなたは私の前を通った。
いつの日かあなたから
ふわっと香る柔軟剤の香りがしなくなった。
香水を付けるようにしたみたい。
なんで香水を付けるようにしたんだろう?
でも私は変わってしまった彼の香りも好きだった。
少し大人っぽくて爽やかで
彼をよりかっこよく見えるような気がした。
私も匂い替えてみようかな
─────『香水』
「言葉はいらない。
ただ、彼女がそこにいるだけで、すべてがわかる。」
僕は耳が聞こえない。
だから言葉はいらないって言うよりは
聞こえないから伝わらない。
でも彼女との出会いが
僕の世界を広げてくれたような気がした。
彼女は表情豊かだった。
彼女のその微笑み、その瞳の奥の輝き、
その手の温もり。
それだけで、彼女が感じる喜びや悲しみ、
怒りや幸せが、僕にも伝わってくる。
どんなに言葉を交わしても、
それ以上のものはないかった。
「言葉がなくてもいい。ただ彼女が居てくれるなら」
この時がずっと続けばいいと僕はいつも願ってる
─────『言葉はいらない、ただ・・・』
いつも通りの朝
いつも通り顔を洗って
いつも通りご飯を食べて
いつも通りのメイクをして
いつも通り仕事へ向かう
そんないつも通りを繰り返していたのに
私の家に訪問してきた君は誰。
全くの見覚えがない私は
ドアを開けるのに躊躇した。
少し迷ってインターホン越しで会話をした。
「こんにちは、家上がらせてください。」
「えっと、部屋番号間違ってないですか?」
「いいえ間違っていません。だって...」
驚いた。
だってに続く言葉は
赤の他人が知るはずのない話だったから
「今開けます」
仕方なく家にあげることになった。
ここからだ。
突然の君の訪問が
私のいつも通りの生活を崩した
─────『突然の君の訪問。』
雨に佇む彼女を見た。
傘を彼女に向けようとした。
でもそれは僕の役目じゃなかった。
だって彼が居るから。
僕は彼女が好きなただのモブに過ぎないから
雨に佇む彼女を見ていたくなくて
僕は彼女に背を向けて歩く
離れていく彼女との距離
彼女を呼ぶ彼の声
僕も主人公になりたかったな。
─────『雨に佇む』
私すぐ忘れちゃうから
今日あったことも
今日やった事も
覚えられない。
今日の日付も曜日も覚えてない。
今覚えてるあなたの事も
もうきっと忘れてしまうんだ。
だから私は日記帳に書く。
いつか文字が読めなくなるかもだけど
書けなくなるかもだけど
忘れないように
大切なことをずっと覚えておきたいから
私の日記帳には
君のことを1番に書いてある。
あなたが好きだから
あぁ、忘れたくなかったよ。
─────『私の日記帳』