女は“誰も知らない秘密”を売っていた
この秘密には価値がある
なんたって誰も知らないんだから
どれほどの価値があるかは誰も知らない
そんな秘密を売っていた
◇ □ ◇ □ ◇
男は“誰も知らない秘密”を買った
買った瞬間それは消えて無くなった
なんたって誰も知らない秘密だから
誰かが知った瞬間にそれは消えて無くなった
これは誰にも秘密の物語
“静かな夜明け”なんてものを最後に感じたのはいつだったか。
「ガー」とか「グォー」とか。
珍獣の鳴き声ではなく、
隣で眠る小太り亭主から発せられるいびきだ。
毎朝コレに起こされ夜明けに気づく。
グッと手と足で身体を横にすると一瞬訪れる静寂は
仰向きに戻ると同時に終わる。
「ガー」とか「グォー」とか。あ、今「ブオーーウ」ってのが入った。これはレア。録音して聞かせたい。否こんな音端末に残したくない。
いやいや鳴き声鑑賞している場合ではない。
静かな夜明けの侵略者の為に、今日も冷たいキッチンに立って朝食を作らなければならない。。
そうして作られた料理が、今日も侵略者を肥えさせていく。
「手、繋いでいい?」
トクンと脈がひとつ
「うん」
トクンと脈がふたつ
心臓から送り出された血液が
身体を一巡りして30秒
この思いが私をめぐる
この思いがあなたに伝わる
heart to heart
毎年 君の誕生日に花を送るよ
いつか 許されたなら
一緒になろう
* * * *
*
*
*
*
* *
「おばあちゃーん。また花届いてるよ」
「あら、もう。1年は早いわね」
「ずっと気になってたんだけど誰から?」
「さぁ、誰だったかしら」
“永遠の花束”
やさしくしないで
そばにいて
にがくてあまい
にりつはいはん