「夫婦」

私はだれかと夫婦になったことはない

夫婦ってどんな感じがするのだろう

親を見ててもぴんとこない

じいちゃんの腰に、ばあちゃんが
手袋はいて塗ってた薬

牛用なんだって
本当かな

私もだれかの腰に
牛用の薬を塗る日がくるのかな

「宝物」

外で遊んだ記憶

石に葉っぱを押し付けて
その上から石で、ゴリゴリゴリ

水に溶かしたら
飲めないお茶の、できあがり

雑草茶、またつくりたい

「たくさんの想い出」

植木鉢を持ち上げる

たくさんのワラジムシが出てくる

わらわらわら…

私の人生、良い想い出あったろうか

わらわらわら…

この子達には、想い出があるだろか

この子達にはきっと想い出はあまりなくて

「今」を生きている

「みんなでくっついたらあったかい」
「このごはんおいしいな」

そんな声が聞こえてきた気がして

私も「今」を生きようと思った

「冬になったら」

冬になったら

空気はりんとするけれど

私はぎゅっと縮こまる

長靴に踏まれ
雪もぎゅっと音を鳴らす

寒いな寒いな

白い息がふわりふわり

見上げた空に消えていく

「秋風」

秋の風は、秋色だ

くるくるくる

落ち葉によって、可視化される秋の風
体の周りを、落ち葉が回る

くるくる落ち葉の真ん中で、ひとりで言う
「ひゃーさむい」

くるくる落ち葉の真ん中で、身動きが取れない私は、
まるでとっても無力な人だ

今年もやって来た、秋風は、
落ち葉のダンサー、風に乗せて
くるくる、くるくる、踊ってる