これが、お前の人生の終点か。
ひどい姿晒しやがって。
そう悪態をつきながら、心は、
この世で一番大切な人が自分より先に死んだ虚しさでいっぱいだった。
【終点】
この想いが上手くいかなくたっていい。
むしろ上手くいかないほうがいい。
今、アイツの隣に自分の居場所があるだけで、十分幸せなんだから。
…これ以上の幸せをもらう資格なんて、オレにはないから。
【上手くいかなくたっていい】
最初から決まってた。
アイツとは結ばれないこと。
だってこれはそう決められた「世界(ストーリー)」だから。
はは。
この世界(ストーリー)を途中でぶったぎって、アイツと永遠に一緒にいられる世界(ストーリー)に、創りかえてやりたい。
【最初から決まってた】
病みにするつもりが闇になった。
生まれた時から自分の中には、命の鐘があった。
この鐘が108回鳴ると、自分は死ぬらしい。
誰に教えられたわけでもないが、その概念が、昔から頭にあった。
除夜でもないのに108回。
くだらなくて笑った日もあった。
鐘の鳴るペースは不定期で、基本は数ヵ月ごとに一度、1ヶ月に二回鳴る時も、三年近く鳴らない時もあった。
これがあることで、周りより寿命が短いことは分かっていた。いつ死んでもいいように、常に身辺整理をしながら生きてきた。
齢23、
107回目の鐘が鳴ってしまってから約1ヶ月。
あの脳内に響く不気味な音があと一度鳴ったら、自分は死ぬ。
いつでも死ぬ覚悟は出来ていたのに、それを自覚して、いままでにないほど恐怖していた。
だめだ、
せめて、せめて、家族や友人に遺書を書き終わるまでは、待ってもらえないだろうか。
そうしなければ死んでも死にきれない。
105回目ごろから考えていた文章を著すために、震える手でペンを持ち直した。
【鐘の音】
どんなにつまらないことでも笑ってくれるあなたの側にいられることが、一番の幸せでした。
【つまらないことでも】