「力をこめて」
この指に力をこめれば。
そしたら、貴方は永遠に私だけのモノになる。
誰も触れない、話せない、見ることも出来ない。
私だけの貴方になる。
鍛えられた筋肉。筋張った首。
私の指の下でドクドクと脈打ってる。
力をこめれば、この脈打つ動きは止まる。
閉じられた瞳、少し開いた口元。
意識がなくても、整った顔。
力をこめれば、その瞳は二度と何も映さなくなる。
その唇は、言葉を紡がなくなる。
他の子に愛を囁く事も出来なくなる。
貴方が起きる前に。今の内に。
私の中の悪魔が囁く。
少し、この指に力をこめるだけ。
そしたら、貴方はもう誰のモノにもなれない。
私の元にずっと居ることになる。
私だけの、貴方になる。
······これでもう、貴方は私だけのモノ……
「過ぎた日を想う」
振り返っても、後悔しても、あの日には戻れない。
あの時こうしたら。もしこう言えば。
タラレバはキリがなくて、後悔ばかりの日々。
あの時、貴方を引き止めたかった。
「別れたくない」「私を選んで」「あの娘の所になんか行かないで」
溢れる言葉は沢山あったのに、何一つ言えなかった。
多分、私が引き止めれば貴方は私を選んでくれた。
「俺と一緒に···」その続きを飲み込ませたのは私。
だって、私は貴方が居なくても生きていけるから。
貴方が居なかったら、辛いけど、でも笑えるし、自分の人生を楽しめる。
でもあの娘は、私が持っていない、儚さと、危うさを抱えてる。
精一杯強がってるけど、貴方が居ないと駄目で。
愛情だか、依存だか、独占欲だか。
何なのかはわからない。
でも、貴方が居ないと駄目な事は確かで。
だから、言えない。言えなかった。
「私は大丈夫だから、行ってあげて。」
貴方は言葉を飲み込んで。でも、一言だけ。
「オマエはいつもそうやな」
責めるように、諦めるように。
私も、貴方も、沢山の言葉や気持を飲み込んだ。
不器用だったけど、精一杯誠実であろうとした。
今振り返ると、実はあの娘は意外としたたかだし、私も決して強い人間ではなかった。
でも、人を犠牲にする自分でいるか、貴方と居ることを選ぶか、って言われたら。
きっと毎回葛藤する。悩んで、苦しんで、泣いて。
でも、毎回同じ道を選ぶと思う。
絶対に後悔はするけど。せめて自分の気持位は伝えたいって思うけど。伝えるべきだと思うけど。
でも、過ぎた日を想う時に、自分を好きでいたいから。誇れる自分でいたいから。
だから、私はきっと同じ道を選ぶ。
「星座」
星座占いとか、血液型占いとか。最近ではMBTI診断とか。
晴れ女、雨男とかもあるかな?
何か根拠があるのかもしれないけど、それでマウントとる人が、鬱陶しい。
人間百人いれば全て違ってて、それが一万人でも十億人でも一緒。全ての人が違う。
傾向はあるかもしれないけど、たかだか10や20に分類して語れる話じゃない。ましてや血液型なんて4だよ?分けれるわけないし、なのにそこで勝ち負けなんてあるわけないのに、一人で勝手に勝ち誇ってる。
占いに限らず、本人の努力でどうにもならない所でマウント取りたがる人って、何なんだろうね?
自分の努力でもぎ取った物がないんだろうね。人から、家族から、与えられた物でしか、自分を誇れないんだろうね。
そう思うと、なんだか可哀想になってきて。
最近ではマウントとる人がいたら、「ああ、この人私に負けてる、って思ってるから必死に優位を示したいんだな。勝ってる人は優位を示す必要もないし、そもそも下位の人を相手にしようとしないよね?可哀想~」って思ってたら、腹が立たなくなってきた。
どうせ自分が嫌いな人って、根本的な所では自分の人生に関わらないから、だったら、自分のストレスがないように考えた方が楽。
って言うか、そんな人相手にするだけ時間と気持の無駄だと思う。
世の中の悪く言われがちな分類に属してる方。
気にする必要なんてないよ。
腹立てる価値もないからね。
「踊りませんか?」
いつも、ただ貴方を見つめるだけだった。
貴方は人気者で、声をかけようとしても、周りの娘の視線が痛くて。
ただ声をかける、それだけで心臓が壊れそうになるくらい、いろんな意味でバクバクして。
それで結局声もかけられず、毎日後悔してた。
でも、明日は体育祭。
ダンスがあって、誰が誰を誘ってもいい。
貴方の周りには相変わらず人が溢れてて。
近づくだけで視線が痛い。
でも、それでも。
こんなきっかけでもないと、とても貴方には、声をかけられないの。
もしこのまま卒業したら、きっと私は貴方に忘れられる。
同窓会があっても、「あの娘誰だったっけ?」って言われる存在でしかない。
だったら。そんな位なら。
嫌われてもいい。貴方の記憶の片隅にでも居られるのなら。
ずっと覚えてなくていい。ふとした時に、告られた武勇伝を語る時でもいい。少しでも、思い出してくれれば。
そう考えて、勇気を振り絞った。
「好きです。私と踊ってください。」
「巡り会えたら」
ふと、初めて付き合った人の事を思い出した。
あの頃は汚れも知らず、駆け引き等もわからず。
ただひたすらにあの人だけを想ってた。
あの人と別れてから何人も付き合ったけど、振り返ると、多分あの人が一番好きな人だったと思う。
もう連絡先もわからないし、もっと言えば生きてるかもわからない。
でも、気持ちの何処かで、もし何処かで巡り逢えたら、と思ってる。
でも、それと同じ位の強さで、巡り逢うのが怖い気持ちもある。
幻滅されたら嫌だな、とか。
又あの頃の様に、凄く好きになって、自分で自分がどうしようもなくなったら怖いな、とか。
そうやって色々考えると、やっぱり、逢えない方が正解なのかも。
一番純粋で、ただ真っ直ぐにあの人を好きだった私を覚えていて欲しいから。
そして、自分もあの頃の大好きだったままのあの人を覚えていたいから。