「秋風」

涙をぼかしたような雲
乾ききった夕暮れ時
いたずら風の気まぐれに
前髪直すわたしの指先
冷えて掠れて人恋しい

「スリル」

針の先をつまんでみては
皮膚にちくりと刺すような
遊びをただしてるだけ
ちくりと刺された痛みはここに
全て預けてしまうだけ

「意味がないこと」

行くあてもない裸足
つま先から冷えていく
ワンピースは場違いで
思わずしゃがみ込んだ
足首を掴んで暖を取る
その指たちもまた冷たい
息が白く色づいたら
また季節がめぐり
地球がまわる

「柔らかい雨」

みぞおちに落ちた塊の
行方も知らないうろこ雲
葉越しの空に探しては
代わる代わるの雨雫

「忘れたくても忘れられない」

私の腰にしがみつく
うっかり者の叫び声
一気に眠気が吹っ飛んだ
咄嗟に体が跳ね上がり
うっかり者は
ジジジと鳴いて飛んでった
雷誘う入道雲に