あぁなんて寂しい日だろう
そんな風につぶやきながら
何ヶ月も前からあたためておいた
一目惚れのブックカバーを開封する

あのとき買った小説は
そろそろ穴が空きそうだから
いよいよお洒落をさせて
今日はどこかへ出かけよう

あぁなんて寂しい日だろうか
つま先トントン鳴らしながら

あの大空をひっくり返せば
私は空を飛べるかしら
きっと海が耐えきれなくて
私に泳げと急かしてくるわ

胸が高鳴ったり
少し切なくなったり
そんな音であふれる街を
私は歩かない

早く帰って
お鍋でも作って
ここぞとばかりのお酒をあけて
テレビから流れるそれっぽい音に
人知れず酔うだけ

寂しくない？
と聞かれたり
寂しそうと思われるかも
と考えたり

寂しさが芽吹くのは
たいていそういうとき

クリスマスなんて関係ないけど
瞼の裏にはりついて
瞬きをするたび
ただの灯になったイルミネーションが
心を揺らす帰り道