胸が高鳴ったり
少し切なくなったり
そんな音であふれる街を
私は歩かない

早く帰って
お鍋でも作って
ここぞとばかりのお酒をあけて
テレビから流れるそれっぽい音に
人知れず酔うだけ

寂しくない？
と聞かれたり
寂しそうと思われるかも
と考えたり

寂しさが芽吹くのは
たいていそういうとき

クリスマスなんて関係ないけど
瞼の裏にはりついて
瞬きをするたび
ただの灯になったイルミネーションが
心を揺らす帰り道

あなたの言葉や表情で
あなたの心が見えたらいいのに
わたしの言葉と冷えたスマホで
わたしの心が届いたらいいのに

どんなに透かして見てみても
どんなに無理やり重ねてみても
決して混ざることはない

はじめから
分かっていたはずだった
そんなものはどこにもないと

おはよう
もこっとふくらんだカーテン
覗く小さな鼻
今か今かと私を誘う

さあ
朝ごはんの用意にかかろう
パッとカーテンが躍る
小さな爪の音が聴こえる