変わらないものはない
見ている。ゆらりと白煙が漂う。鼻から『ゆぅるぅ』と肺へと入れる。しばし呼吸を止め、粒子を細胞に行き渡らせる。十分に満喫し、口と鼻の両方から、『ふぅしゅぅ』と吐いてゆく。煙はドス黒く変化していた。これから行く健康診断の結果は良好な物になるだろう。
クリスマスの過ごしかた
眼が覚めた。時計を見た。6時半。障子からは、朝の陽がやんわりと漏れ出ている。光の粒子がキラキラしていて、軽い温度を感じさせる。身体を起こしてkitchenへ向かう。ラジカセの電源を入れ、ジャニスをかける。ビートが効いており、しゃがれた声が心地よい。コーヒーを淹れる。なんの拘りもないのでインスタント。胃の中に招き入れてから茹で卵を丸ごと口に収める。数口に分ける場合、黄身がこぼれるのでそれを回避する。本をパラパラ読みながら今日一日のプランを頭に巡らせる。はたと思った。クリスマスじゃん。
イブの夜
寂しさがつのると、メロディを作る。作った旋律を紐状にして、新体操のリボンみたいにクルクルする。クルクルしたのを投げ上げてキャッチ。キャッチしたのを色付けする。色付けしたのを液体にして、渦をつくる。渦の中に吸い込まれてその先は君の体内。
プレゼント
青い音色のトランペットと、形のない画集。Gmのハチミツと、甘い弧を描く針と糸。切り取られた幸福と、硬い輪郭の旋律。味覚の曖昧なゆにこーんと視力を回復した聖者。ひびの入ったクラシックのレコードとキリンと飼い猫を同列に見なす老夫婦。美意識から自由になるマイルスと記憶を羅列するパーカー。限定を拒否する天体と‥‥‥フレーズをドライフラワーに色付けして、冴えたキミの寝顔に散りばめたい。
黄色い粒子がほのかに舞い散る。空間が眩く満たされてゆく。サラサラ指の間に触れる甘やかさ。軽やかに身が蕩ける感覚。重力は希薄さを増してゆく。霧散する大気になったようであった。意識の広がりは心地良かった。柚子のそれとの混ざり合いは実に楽しく、その時間を乱したくはなかった。