【太陽】
⚠⚠BL警告、BL警告。⚠⚠
本文ハ某世界擬人化作品ニオケル〈日本←英國〉ノBLぱろでぃーデアルタメ、各々ヨロシク検討ノ上読マレルコトヲ望ム。尚、当局ハ警告ヲ事前ニ告知シタ故ニ、苦情ハ一切受ケ付ケヌモノトス。以上。⚠⚠
虚ろな足取りだなと他人亊のような無關心さで腐しながら屋敷に戻った。出迎えに來た執事の、常と變わらぬ落ち着いた物腰に辛うじて平靜さを保たせながらぼんやりとやり過ごして、いつもの流れのまま應接室へと足を向けた。部屋にあいつの姿を求めて無意識に目が彷徨うが、一目瞭然に誰もいない現状を認められるまで必要以上に時間がかかった。
「今日でお別れです」
昨日はっきりとあいつが俺に言い渡したのだから當然のこと。だが承服できなかった、受け入れられなかった。今でも、この先もずっと―― 二百五十年前もそうだったように。だがあのときは今ほどの絶望に陷ってはいなかった。鎖國という生易しい障害など、機が熟せば木っ端微塵に打ち碎かれるはずであったろうから。ちゃんと希望は存在していたのだ。しかし、今は?世界中が混迷を極め、いたるところ爭いの火種が無氣味にくすぶるこの現代では?同盟という名のもとに寄り添っていた俺たちが、引き離され新たな道を强いられた未來に再び交わる可能性など、絶望に等しいだけではないのか。
眞夏の太陽がゆらゆらと大窗から光をそそいで宵の口でも明るく室内をてらす。あいつが去っていた部屋を、屋敷を、そして夢から覺めよと言わんばかりに、ひとり殘された俺の視界を無駄に晴らす。そのせいか、しだいに假死状態だった感情がじわじわとよみがえり出し、涙が知らぬ間にこぼれ落ちていった。力なく突っ立っていた俺は支えを求め、ふらりと傍のソファの背もたれに手をかける。するとそこは昨日までのあいつの指定席で。優雅な所作で紅茶を愛でながら本を讀み、ほのかにくつろぐ姿がつかの間のまぼろしとなって目の前をよぎっていった。
直後に襲った猛烈な呼吸困難。
「 ―――……!」
反射的にシャツの上から胸元を押さえつけ、ぐらりと膝から崩れていく發作的な脱力感に爲す術もなく、喘ぎながらソファに倒れ込んだ。やがて全身が震え出すと聲にならない嗚咽がこぼれて止まらなくなる。初めて知った、抑制不可能な激情のすさまじい暴発 ―― 長い間、溫もりが去ったソファに身を預けて、心の嵐が鎭まるまで吹き荒れるがままに任せた。
あいつに刻まれた、この致命的な感傷の思い出という置き土產は、苦痛すらもどこか甘美で ―― 胸が疼くたびそれはいつの間にか快感へと妖しく変化し、病める俺を愛撫するようにやさしく醉い狂わせるものとなっていった。
【鐘の音太陽】
coming soon !
【つまらないことでも鐘の音】
coming soon !
【目が覚めるまでにつまらないことでも】
coming soon !
【病室】
◀◀【澄んだ瞳】からの続きです◀◀
―― 僕を……知っている ……?
どういうこと?思い掛けないヴィルケの言葉に目を丸くし、返す言葉が思いつかずアランは目の前の青年をただ茫然と見つめ返すだけだった。しばしの沈黙。なにか言おうとヴィルケが口を動かしかけたその時、見計らったかのようにCT検査室のドアが開いてドクターが顔を出した。
「ジュノーさん、患者の検査結果が出ました、どうぞ中へ」
「 ―― ああ、わかりました。ヴィルケくん、行こう」
ポカンと見つめあったままだったアランとヴィルケはそれを潮に我に返り、マルテッロのいる検査室の中へと連れ立って移動した。
「ホッとしたよ、最悪の事態に至ってなくて」
ドクターの説明を受けたあと、今度は入院準備のための控えの病室に移り、ストレッチャーの上で眠り続けるマルテッロを視界に入れながら、二人は壁際に据え置かれたロビーチェアに腰をおろして一息ついていた。
検査の結果、マルテッロの脳動脈に小さな瘤が見つかった。それが倒れた原因で、放置しておけばかなり危険な病根であったが、このたびの早期発見により、ちょっとした手術をしてしばらく入院すれば回復すると言うことであった。
「本当に……感謝してもし尽くせません、ア……いや、ジュノーさん。あなたのおかげです。あなたが助けてくれたから……」
マルテッロが回復するとわかり、張りつめていた心の糸が緩んだのだろう。壁に頭を凭れさせたややしどけない仕草でアランに顔を向け、弱々しい微笑みを浮かべてヴィルケは礼を述べる。
「異議あり。最大功労者は君だと思うな。倒れた彼の処置を後回しにせず、なりふりかまわず偶然通りがかった僕を捕まえて、迅速に病院へ運び込ませたからだよ。そしてその間にちゃっかり納品もこなしてきたんだから、君、かなりしたたか者だね。ただの若手グレーカラーとは思えないよ」
しおらしいヴィルケとは対照的にアランは意地悪な笑みでやり返した。途端にヴィルケは、また耳まで真っ赤になって姿勢を正し、哀れなほどうろたえてアランに弁明しようとする。
「そんな!……、ジュノーさん、僕は決して、あなたを都合よく利用したわけではなく……」
「冗談だよ、ヴィルケくん」
必死に申し開くヴィルケをクスクス笑ってなだめながらスマートフォンを取り出したアランは、ケースポケットに挟んでいた彼の名刺を手にしてしげしげと眺めたあと、ヴィルケに視線を変えて訊いた。
「イダ・スティール・プロダクツの従業員……ということは……何年か前に僕のワークショップに参加してくれた人かな?それで僕のことを知っていたのかい?」
▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶