Seaside cafe with cloudy sky

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3/22/2024, 11:23:32 AM

【バカみたい】

coming soon !

3/21/2024, 3:03:18 PM

【二人ぼっち】

coming soon !

3/20/2024, 12:05:56 PM

【夢が醒める前に】

coming soon !

3/19/2024, 10:25:25 AM

【胸が高鳴る】

coming soon !

3/18/2024, 12:09:43 PM

【不条理】


⚠⚠BL警告、BL警告。⚠⚠

本文ハ某世界擬人化作品ニオケル〈日本←米國〉ノBLぱろでぃーデアルタメ、各々ヨロシク検討ノ上読マレルコトヲ望ム。尚、当局ハ警告ヲ事前ニ告知シタ故ニ、苦情ハ一切受ケ付ケヌモノトス。以上。⚠⚠








小さなこどもの姿になったまま、いまだに目を覺まさない日本。燒け野原と化した君の國土、そしていとけない君の寢顏を見るたびに僕は自分の愚かさを呪って消えてしまいたくなる。アメリカの惡魔のようなはかりごとを見拔けず意のままに動いてしまい、君を十字架へと導いた一因を僕が作ってしまった。悔やんだって過去は變えられないのに、なんどもよみがえるあのときの思い出 ―――

「だからもうあの同盟は無意味などころか俺たちにとって脅威でしかない。君は英聯邦だといっても、俺とぴったり鄰り合わせになってる限りは、この先どこに重點をおいて手を打つべきか言うまでもないだろう?」
ふらりと僕の家に遊びに來たアメリカ。お互いの近況や豫定を語り合うなか、來月イングランドで聯邦の化身だけの英日同盟更新に關する評議があると言ったら思案深げな態度で説いてきた。
「……確かにロシアは破れて弱體化したから太平洋は當面安泰だし、ドイツも降伏してヨーロッパの戰火は治まった。でも、だからといって急いで同盟を破棄しなくたって。あれは今後の平和維持にも貢獻するんじゃないかな」
肩をすくめて愼重論を述べる。アメリカは變なところで用心深く被害妄想氣味だ。それに執着心も强い。ふたごの僕と決定的に違うのはこの點だ。
「頼りない平和維持なんだぞ。イングランドの威を借りて東亞でのさばる日本は、間違いなく次の標的としてチャイナと俺を潰しにくる。俺が攻撃を受けたとき、聯邦の君は英日同盟を理由に鄰國の俺を見殺しにしなきゃならないし、俺も君に助けを求められない。惡趣味な同盟だと思わないか?」
「逆にこの同盟のおかげで君は標的から免れる可能性だってあると思うよ。おまけに太平洋のあの廣さだ、日本は攻撃目標に到達するだけで戰意喪失さ」
アメリカの心配性にもほどがある。本氣にはせず笑って受け流した。それでも彼は自説を引っ込めない。
「樂觀的だね。シベリアの一件で强慾な日本の思惑が充分透けて見えたのに、イングランドどころか君もまだ氣付かないふりをするなんて、賢明な判斷とは言えないな」
「ほんとは君の派遣軍が、惡戲にシベリアで置き去りにしたんじゃないの?」
ちょっぴり意地惡を言ってみる。アメリカは僕の皮肉に、さもガッカリしたようにため息をついてふるふると頭を振った。
「どう捉えようと自由だ。けどよく考えてごらんよ、世界中の有亊につけいって美味しいところを一番多くさらっている國がどこだか、はっきりと頭に浮かんでくるだろう?」
「そうだね、僕には無害で小さな島國と、星がきらきらまぶしいお鄰さんが頭に浮かんできたよ」
もううんざりしてきた。氣分を變えようとソファから立ち上がり、棚からレコードを物色する。
「上出來だ、カナダ。まだなんとか無害なうちに島國を封じ込めておけば、みんなの秩序は保っておける。俺は手に負えなくなるのを默って見てられないんだよ」
どうやら彼は自分の御旗を忘れちゃったみたいだ。時々アメリカと話しているとむなしくなる。ピアノの小品集がいいかと見繕ってプレーヤーにかければ、針の摩擦音から始まって流れだす輕やかで甘いメロディ。重くなりかけた空氣をかき混ぜていく。
「へえ、こんなロマンチックな曲聽くんだね」
アメリカも席をはずし、ソファから少し離れたミニバーで珈琲のおかわりを自分で淹れていた。僕も空のカップを取って彼のとなりに立つ。
「あなたが慾しい、か……俺もよく聽くよ」
ポツリと言われた思いがけない言葉に好奇心がくすぐられる。
「そうなんだ?意外だったな、もしかしてアメリカ、戀してるの?」
政治情勢の話なんかよりこんなおしゃべりのほうがずっと愉しいや。しばらくミニバーカウンターで立ち話。
「ふたごの君にだけ教えてあげる。好きな人がいるんだ。まだ思いが傳えられなくて苦しい毎日だけどね」
淹れてたてのほろ苦い珈琲の香りが湯氣とともにアメリカを包む。その中で靜かに微笑む彼は別人のように大人びていた。
「片思いってこと?アメリカモテそうなのに……ねえ、それは何度目の戀?」
僕にはまだそんな甘酸っぱい經驗がない。身をのりだして興味津々で訊きこむ。
「俺の初戀だよ。唇のキスだってまだ誰ともしたことないし、もちろんそれ以上のことも。ずっと、その人とのために守ってるんだ」
少し照れながらも打ち明けてくれた健氣な誓い。知らなかった、アメリカがこんなに一途だったなんて。
「いつか……結ばれるといいね、その人と」
新たに知ったふたごの可愛い一面に嬉しくなって、心からのエールを送る。
「ありがとう。俺は絶對にあきらめないよ」
そう言ってアメリカは表情を引き締めた。するとスカイブルーの瞳が眼鏡のレンズ越しで、なぜだかひどく冷たく曇ったような氣がした。

「お待たせカナダ、もう休んでくれて大丈夫だぞ。あとは俺が日本を見てるから」
明るい聲でアメリカが戻ってきた。まだなにも知らなかったあのときのほのぼのとした囘想が霧散していく。板敷きの神聖な場を我が物顏でドスドスと歩き渡り、奧まで來ると御簾が上げられ、僕たちのいる拜殿へと入ってきた。
「俺の愛しい日本、ちょっと離れているだけでも戀しくてたまらなかったよ」
眠ったままの小さな日本を寢牀からひょいと持ち上げ、ギュッと愛しげに抱き締める、鳥肌が立つような光景。戰爭が終わるまでアメリカは日本をなんと呼んでいた?邪惡な國、アジアの狂犬、全てを滅ぼしつくすべきアメリカの敵 ――― 憎惡と侮蔑を剥き出しに容赦ない排斥を貫いていた。それがふたを開けてみれば、あらゆることが日本を獨占支配するためだけの陳腐な目眩ましだったのだ。日本降伏の直後からアメリカの態度は激變し、變わり果てた小さな日本を目にするや、四六時中抱きかかえて片時も離さない。日本がどうしてこんな姿になって眠り續けているのか氣にも止めずに。日に日にあらわになっていくアメリカの異常性に僕の身軆がわなわなと震えだす。怒りなのか悲しみなのか、恐怖心なのか ――― いたたまれず無言で立ち去ろうとした。
「ねえカナダ、まだ日本は目を覺まさなかったかい?」
出て行こうとした僕の背に問いかける。振り向くと抱っこしている日本だけを視界に入れて、長い黑髮をやさしい手つきで梳き撫でていた。
「ピクリとも動かなかったよ」
感情を押し殺して手短かに傳えた。そう、ありがとう。と輕く言い寄越すともうすべての意識を日本に傾け、胸の中の初戀の君へ蕩けるように甘く愛を囁く。
「愛してる日本、夢の中で聞こえてるかな?ずっとずっと傳えたかったんだぞ、俺の本當の氣持ち。君の全てを手に入れるまで我慢してたのはとてもつらかった……もう君は俺だけのものだよ。誰にも渡さない……」
小さなこどもの姿で人形みたいに眠り續ける日本にいつまでも語りかける、うすら寒いアメリカの無邪氣な樣子を直視できずに、僕は御簾の外へと出ていった。

こんな。こんなおぞましい結果が待っていたなんて。崩れてしまいそうな足どりをこらえながら、少しでも早くこの場から逃れたいと急ぐ。僕の犯してしまった大罪 ――― あのとき、祕密を打ち明けてくれたアメリカに絆されず同盟に異議を唱えなかったら。もっと早くアメリカの狂執性に氣付けていたら。そして日本と内化身すべてが一丸となっての壯絶な覺悟で、世界の不條理に身を賭して龜裂を刻みつけた悲しすぎる眞のくわだてを、本懷を、ほんのわずかでも理解することができていたなら。こんな惡徳の瘴氣漂うおぞましい現實だけは囘避できたのだろうか。

「俺たちは永遠に一緒だ。反對意見は認めないからね」

ようやく渡殿を巡り、拜殿をあとに遠ざかろうとしたところで聞こえたアメリカの聲は、氣味が惡いほどに幸せそうだった。

いつか救いの日が來ることを。こんな祈りは罪滅ぼしにもならないけれど、途中たどり着いた參拜場所で止めどなく流れだす涙をぬぐいながら、せめてもと日本のために强く祈った。

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