「インナーチャイルみたいだよね」
誰かがそう言った。
インナーチャイルドとは内なる傷ついた子供時代の自分、自分の意識の中にいて、リアルで生きる私たちを応援してくれている自分。
全てが満ちているとき、そして、全てが影に隠れ切っている時、私たちは心身に不調がもたらされる。
つまりは、傷の全てをさらけ出しているとき。
つまりは、自分という存在が隠れきっていて、誰にも見つけてもらえないとき。
そんな時に、私達の心身は不安定になったり、不調になったり、そして苦しくなったり。
半分では裏表が半々で、自分を偽って明るく見せているようにも見える。
それが例え、苦しい時でも。
大部分が心地よく安らかな影で、自分が隠れていて、でも全く誰にも見つけてもらえない訳ではない、3日分だけ輝いているくらいが丁度いい。
傷ついた子供、傷ついた自分にとって、それくらいで丁度いい。
テーマ『三日月』
私は19歳の頃に、精神疾患が発覚した。
イラストを描く職業を夢見ていた私にとって、これは致命的とも言えるものだと、すぐに理解した。
健常者と精神疾患者が描くイラストは比べてみると一目瞭然で、前者はさまざまな表現ができるのに対し、後者は奇妙なものや制限された世界で、イラストを描いてしまうのだ。
それを精神疾患が発覚する以前に本で読んでいたので、これで私の未来は無くなってしまった、胸がキリキリと痛い。
これから何を楽しみに、何を希望にして生きていけばいいの?
そんな感情が込み上げていった。
担当医は私がイラストで仕事をしたいと伝えると、鼻で笑いながら、
「できるもんなら、やってみろ!」
と言い放った。
その時の私からは言葉が出なかった。
それから十数年の時が過ぎて、私は精神疾患を克服するため、マインドフルネス、いわゆる瞑想を始めた。
当時、パニック発作が酷く、あまりにも毎日その恐怖に怯えていた為、心を落ち着けようと思ったのだ。
そして実際にやってみたマインドフルネスは、私の期待を裏切ったのだ。
初めて一年経った頃、パニック発作に怯えることはほとんど無くなった。
今まで1日のうちで、怯えて過ごしていた時間を、自分の好きなことなどをする時間に充てることができるようになったのだ。
そして、マインドフルネスをした私への、もう一つの大きなプレゼントは、明るく楽しいイラストを描けるようになったことだった。
精神疾患になってから、明度や彩度の低い、いわゆる暗くてパッとしない色彩の、なんだか目に生気が宿っていない人物のイラストしか描けなかった。
それが徐々に、生き生きとした人物、そして描いている自分が明るく楽しくなる色彩で描けるようになった、そのイラストたちは、なんだか、
「ああ、私が、この私が、こんなにも自分の描いたイラストを眺めて楽しめるなんて、もう2度と無理だと思っていたのに…」
と涙をこぼしながら、心を弾ませながら、家族にこういうイラストが描けるようになったんだよ!と、胸がキリキリしていたことなんて、すっかり忘れて、見せて回っていた私に、
「まだまだやり直せるよ、また挑戦しようよ。好きなこと!」
と言っているようだった。
色とりどりの感情を取り戻し始めた私には、色とりどりの未来が待っている。
テーマ『色とりどり』