「私の当たり前」
私の当たり前と人の当たり前は違う。
それは至極当然なこと。
だとしたら、常識って何?
私にとっての常識と人にとっての常識は違う。
もちろん、「一般常識」はある。
「一般常識」という名の「最低限の常識」。
言ってしまえば、「最低限の常識」以外は「常識は人それぞれ」なのだ。
よく「自分の常識を押し付ける人」がいる。
よく言われるから、「常識と化した言葉」もある。
「努力は報われる」「努力は裏切らない」
これはよく言われる言葉だ。
確かに「努力により成功した事例」はたくさんある。
だが、あくまで「たくさんある」のであって、「必ず」ではないのだ。
「どんなに努力してもどうにもならない」
そんなこともたくさん存在する。
「どんなに勉強しても覚えられなかった。」
「どんなに勉強しても理解できなかった。」
「どんなに練習してもできるようにならなかった。」
私にはそんなことがたくさんある。
だから、やる気なんてなくて、「努力」が出来ない。
そんなことも普通にある。
でも、自分なりに努力はしているつもりで。
それに「自分の中では成功や合格」でも、「お前ならもっとできる」なんて言われて、その「もっと」が、その「期待」が、自分の負担になっている。
そんな、悪循環が起きている。
友達の思い出。
私に友達が出来たのは小学一年生の頃。
親友ができたのは小学二年生の頃。
二人いて、二人とも優しくて。
一人はちょっと毒舌。
それに、スポーツ万能で成績は私より少し良い。
勉強は少し苦手なようだった。そして、容姿端麗。
もう一人はスポーツ万能で成績優秀。
性格も良くて、容姿端麗。
それに比べて私は、スポーツはめっぽうダメ。
走れば、ほぼ最下位。
成績もあまり良くなかった。
怒られてばかりだったし、人に迷惑をかけてばかり。
おかげで散々比べられた。
言われたことをずっと気にし続けてしまう私は、それをずっと気にして自分でも比べてしまい、劣等感を感じる日々だった。自分に嫌気がさす。
でも、そんなふたりとは高校に上がり別れるまではずっと一緒にいた。
この道の先に。
道・・・。
将来への道。
もう疲れた私には、あまりに酷だと思う。
人間関係に疲れた。
否定されるのも、怒られるのも。
自分が普通でないと言われているようで怖い。
赤い糸。
”運命の赤い糸”なんてよく言うけど、それって何?
”運命”って、何?
決められてるのだろうか。
とあるゲームでとあるキャラクターが言っていた。
”たとえば、己の一生がすべて定められているとしたらどうだろう”と。
まぁ、そんなこと我らには知る由もないことだ。
もし、本当にこの世に神がいるのだとしたら、その神がこの世界のことについて決めているのだとしたら。
なんて、これは私の戯言だ。
そのゲームに影響を受けすぎた私の戯言。
だから、戯言としてこの後の話を聞いてほしい。
私はよく考える。
もし、”すべてが定められているのだとしたら”と。
もし、この世の出来事すべてが定められているとしたら、惨劇も喜劇も何もかも、何者かが定めたシナリオ通りに起こり、影響を及ぼしているのだとしたら?
答えの出るはずもない問い。
だが、考えれば面白い。
考えたことの無い者へ。
考えてみてはどうだろうか。
発想力が鍛えられる。
物事の見方が変わる。
おっと、この辺にしておこうか。
では、また次のお題でな。
『夏』
夏といえば何だろう。
海、向日葵、西瓜、蝉、かき氷。
たくさんある。
でも、私が思い浮かべるのは”肝試し”。
そう、これはある夏の夜に”肝試し”をした話。
肝試しをしたのは、薄暗い森の中だった。
周りには明かりも少なく、静かだ。
蝉などの虫の鳴く声と風、風に揺れて木の葉が擦れる音だけが辺りに静かに響いている。
この肝試しは”森の中の大岩にタッチしたら入口まで戻ってきて終了”というものだった。
私は楽しんでいたが、同時に怖かった。
この森にはある噂があるからだ。
”妖が出る”という噂や”妖は白蛇で、たまに白い着物を見に纏った銀髪の美しい男に化けて出てくる”という噂、”妖に見つかれば神隠しに合う”という噂があった。
そう、怖いと思いながら色々と考え事をしていると、道が分からなくなってしまった。
私は途方に暮れた。
だが、そんな時のことだ。
足に違和感があると思い、ふと下を向いてみると深紅の瞳をした白くて美しい蛇が一匹、私の足に巻きついて、チロチロと薄紅色の細い舌を口から覗かせていた。
私は噂を思い出して一瞬怖くなったが、白蛇を見ているうちに何故か落ち着いた。
白蛇を腕に巻き付けると、頬擦りをしてきた。
”可愛い”
白蛇と見つめ合って数分。
白蛇がスルスルと私の腕を離れていく。
そして、白蛇が白く光り出す。
”えっ?”
白蛇の光が収まったかと思い、白蛇の方を見る。
”・・・誰?”
そこには、白い着物を身に纏った、銀髪で色白の美しい男が佇んでいた。
”私は先程の白蛇だよ”
”・・・えっと”
”この森で迷ってしまったんだろう”
”えっ、あっ、はい”
”着いてきなさい”
白蛇の化身は私の頭をそっと撫でる。
とても安心する。
私は白蛇の化身に手を取られ、手を繋いで歩く。
そして、着いたのは霧のかかった集落。
そこで、私の頭の中に何かの映像が流れる。
”思い出したかい?”
”少しだけ”
”君はここの姫だったんだ”
”思い出しました”
”この集落は人が居なくなってから数百年経つ”
”そうですね。元から人では無いものが集まってできた集落で、迫害から逃れてきたものも多く居た”
”今や、ここへの未練があって死んでも霊としてこの世に留まり、妖となったものたちの集う場所だ”
”嬉しいです。帰って来れて”
”私も寂しかったんだ。君に会えなくて”
”そういえば、婚約者でしたね。私たち”
”そうだよ。今からでも結婚するかい?”
”いいのなら、喜んで”
”今のこの村には昔の住人たちのほとんどが妖や霊となって集っている。昔みたいに静かに暮らそう”
”はい”
”人の世はあまりに生きずらすぎるだろう”
”えぇ、そうですね。私はずっと違和感を感じていた。人の中で生活することに。人の輪に入れずにいたから”
”君を人の中から救い出せてよかった”
そして、私は村へと足を踏み入れた。
”姫様だ!”
”姫様が帰ってきてくださったぞ!”
”ただいま”
”姫様もお亡くなりに?”
”えぇ、生まれ変わったわ”
”そうですか”
”人として生まれ変わったけれど、やはり人の輪には入れないし、馴染めない。私はたまたまこの近くまで来ていて、この村を見て、昔を思い出したの”
”思い出してくださっただけで良かったです”
そうして、私はかつて一緒にいた人たちとの数百年越しの再会を喜んだ。
それからは、昔のような、とても穏やかで、ささやかな幸せを感じることの出来る生活を送った。
今度こそ、離れ離れにならないために。
今度こそ、忘れない為に。
END