なかじ~

Open App
5/29/2024, 10:56:16 AM

彼女の横顔を盗み見る。
彼女は友人にふんわりとした笑顔を向ける。私にも微笑む。『友人として』の微笑みを。
私は一度、それを壊してしまった。
自らの手で。

『好きです』
そう伝えたのは、メッセージ上で。
言葉にすると照れくさくも嘘くさくなってしまうから。
でも、それは決して『付き合って』といった類いのものではない。寧ろ『好きになってごめん』といった、ただただ罪悪感と内心の吐露に過ぎなかった。
彼女がどんな顔をして返信してくれたのか、最早想像したくもない。

彼女は、とても優しく私を振った。
優しく、優しく、これからの友人関係を壊さないような断り方を。
私は彼女の優しさに甘えた。
彼女の友人として、隣にいることを許してもらえた。彼女は、彼女自身が思う以上にあまりにも優しかった。

甘えてしまったこと、困らせたこと、友人関係を壊そうとしたこと、無理させてしまったこと。
ただ、彼女に「ごめんね」と一言だけ伝えたい。
彼女の隣で笑いながら、吐き出されることのない謝罪を今日も心に積み上げる。

5/28/2024, 2:57:38 PM

揺れる裾を塚みたくて、でもそれはあまりにも気恥ずかしくて。
甘い、酸っぱい、ぴりりと痛い、小さな小さな恋心。彼女の裾が揺れていた。
出会ったときは長袖だった。夏になれば半袖にはなったけど、冷房がききすぎてすぐ彼女はカーディガンを羽織った。
だから私には、彼女の半袖姿という記憶があまりない。
長袖の裾を摘まむので精一杯だった私には、半袖の彼女に飛び付く勇気もない。
私は彼女に恋をしていた。
リボンを外したシンプルな制服姿が、他の誰よりも似合っていた。
長袖の記憶が焼き付いている。
いつか彼女が半袖で、私の前で笑ってくれればいいのに。それくらい、長く多く彼女の隣で、友人としていれればいいのに。
それ以上の関係は、もう二度と望まないから。
そんな願いをこっそり将来に託し、私は今日も長袖の制服に腕を通す。

5/26/2024, 10:46:30 AM

『流れ星が流れている間に願い事を三回唱えると、願い事が叶う』
流れ星を掴まえることは出来なかった。見てから言う、それが出来なかった。
すると、大好きなお姉さんが星になってくれた。私が君の願い事を叶えてあげよう、と。
だから、いつも心の中で念じてた。私はその星を信じていた。

それが迷信と気づいたときには、星は既に砕けてしまっていた。
お姉さんはどこか遠くへ行ってしまった。
私が高校生になった途端。

私はただ、お姉さんといたかっただけなのだ。
お姉さんといると、悲しく苦しく泣き叫ぶ心がいつも柔らかに凪いで、安寧を取り戻せた。
話すことが楽しかった。お姉さんにだけは、何でも話せた。つらいこと、嬉しいこと、気になること、くだらないこと。悲しみ。喜び。自責の念。希死念慮。全て、お姉さんの前ではさらけ出せた。
お姉さんが大好きだった。修学旅行ではお互いにお揃いのものを送りあった。他の子には内緒だよ、と言って笑っていた。

未だ私は、お姉さんに会えることを信じて願っている。もう星は砕けてしまったというのに。

だから、月に、星を叱ってもらわなくてはいけない。願い事を叶えてやれと伝えてほしい。
その一心で、私はただ月に祈る。星といつまでも一緒に、という信仰心を月に差し出して。





せんせー。
東京に行ってしまったせんせー。
私は今でも、あなたのことを待っています。
せんせーがこのアプリを使ってるかなんて知らないし、知らない可能性の方がずっとずっと高いけど、それでも私はずっと待っています。
せんせーにもらった『白い恋人』のストラップは、無くすのが怖くて未だ包装すら破れていません。
あなたに会いたいです。
あなたに会えるのなら、私は星にでも月にでも祈ります。
保健室できっと待ってます。

5/24/2024, 2:06:49 PM

あの頃の私。
遊び回って世界を駆け抜けて、その小さな体で精一杯の世界観を作り上げていった、私。
その私が感じた遊ぶことへの楽しさは、今も私の体の中に。

あの頃の私。
体を思うように動かせなくて、先生も怖くて、でも見栄っ張りと悔しさのおかげで逃げ出さず挑み続けた、私。
その私が作り上げたのびのび動く手足は、今も私の体の中に。

あの頃の私。
目まぐるしい時間の中で戦友と、恩師と出会い、解法を見つける快感の果て、勝利を掴んだ、私。
その私が見つけた世界は、今も私の体の中に。

あの頃の私。
『初めて』に出会って、自分の立ち位置を知って、新しい人々との繋がりが植物の根のように広がった、私。
その私が拾い上げた繋がりは、今も私の体の中に。

あの頃の私。
世界の底へ転げ落ちて、絶望の中逃げ回りながら逃げ切れずに這いつくばって、死にたいと叫びながら呼吸をした、私。
その私がかかった疾患は、今も私の体の中に。

あの頃の私。
学校外の繋がりを何年ぶりにも持って、世界が広がり、また笑えるようになった私。
その私が知った英語の楽しさは、今も私の体の中に。

あの時の私。
投げ出そうと一歩踏み出してあと一歩足りなくて、泣きじゃくりながら世界を壊そうとした私。
その私が繋げた命は、今、私の体の中に。

幼稚園。バレエ。塾。入学。絶望。Labo。
2月24日。
あの頃の、あの時の、私。
から、今の私へ。
未来の私へ繋がるかなんて分からない。
繋がりを、いつかどこかで断ち切ってしまうかもしれない。
それでも、
私はこんな変遷の中で、
こんなものを遺してきた。