孤独と安堵だけを約束された
世界を映す雫の檻
乱反射する太陽光に彩られた
さびしい、さびしい檻
一歩踏み出せば光の中
けれど世界は恐ろしくて
どんなに追いかけても
追いつくことはない
逃げ場などない
取り残された檻の外
【通り雨】
いつの間にか曖昧になった、夏と秋の境界線
太陽も、風も、海も、雲も、草木も、花も、
見れば変わらずそこにいるのに
ふと、顔色を変えては季節まで変えてみせる
始まりを告げ、終わりを詠う
明確な隔たりなどあっただろうか
明確な隔たりなど必要だろうか
春夏秋冬、それだけでは終われない
もっと儚い、世界の移ろいを
365日、人知れず去った儚い時を
季節を告げる、全てのものたちだけが知る
【秋🍁】
見知らぬ土地の、誰かの生活の影を見る
誰かの帰る場所
誰かの遊ぶ場所
誰かの学ぶ場所
一駅ゆく間の窓の向こう
もう帰れない、あの日を見た
チェーン店の看板だけが
不安と孤独を慰める
【窓から見える景色】
形ないものに飢えては
形あるものを求めている
空白は埋まりやしないのに
無色透明な箱のなか
在るようで、無いような
形ないものほど大切だというけれど
満たされていても、飢えていても
目には見えないのなら
触れることなどできないのなら
せめて、形あるものに縋っていたいと思うのは
そんなにいけないことだろうか
応急手当くらい、許されたっていいだろうに
【形の無いもの】
今はすっかり見かけなくなってしまった
ぐるぐる、回るジャングルジム
調子に乗って外側にしがみついては
遠慮なく回す友達に情けない悲鳴をあげながら
振り落とされまいと必死にしがみついていた
わけもわからぬまま世界が回る、まわる、
あ、と思って手が離れたあの瞬間の恐怖と絶望
なぜか英雄のように砂埃を立てて着地した時の、
安心感ととてつもない興奮
あぁあの頃は楽しかった
あぁあの頃は自由だった
なんて。
あんなに大人になりたかったのに
あんなに大人は自由に見えたのに
思い出すのはあの頃の
大人も、世間も、友達も
みんなみんな自由に見えた
小さなちいさな子どもの世界
大人は入れないちいさな世界
回るジャングルジムに振り落とされた
子どもの世界はもう回ることはない。
【ジャングルジム】