鳥のように空を飛べたら、
どんな景色が見えるだろう。
誰しも一度は考えたことがあると思う。
だけど、私は空を飛びたくない。
なぜなら、高所恐怖症だから。
大きな翼を広げ、自由に青空を飛び回る鳥達を
地上から見上げていた方が良い。
その方が自分らしい。
さよならを言う前に、
ありがとうと言えたなら、
その出会いは無駄ではなかったと
思えるだろう。
空模様は気持ちの様子に例えられる。
快晴、曇り、雨。
時には風も手伝い暴風雨の時もある。
今日の空模様は、私の気持ちとリンクしてるかな。
天気は晴れ時々曇り。空模様は曇が多かったけど、時に太陽が顔を出し、洗濯物が良く乾いた。
まっ、なんとなくだが、気持ちもそんな感じだった。
明日はどんな空模様だろう。
青空広がる快晴も良いが、星がいっぱいの夜空を見てみたい。
小学生の頃、祖母の家にあった三面鏡が怖かった。
「開けば、お化けが出てくるんよ」と言われてたからだ。夏休みにテレビで放送していた怪奇現象の番組も三面鏡が良く出ていたので、その時は素直に鏡の向こうには、お化けがいると思っていた。
中学生になる頃に祖母が他界し、三面鏡を見なくなった。自宅にあるのは、どこにでもあるような普通の鏡。年頃ということもあり、お化けの存在なんて忘れて、鏡と向き合う生活になった。
そして、年を重ねて中高年になった。自分の顔を見つめ「最近、しみが増えたなぁ~。肌もカサカサだ」と呟く。シワも出てきた。髪も薄く、白髪が増えた。老化現象だから仕方ないと思う半面、ちゃんと手入れしないとお化けみたいになると感じた。
お化け?
鏡を前にして久々に発するワード。
そうか、そういう意味だったのか。
なぜか腑に落ち、鏡の前で笑った。
「三面鏡を開ければ、お化けが出てくるんよ。」
あれは鏡に映った自分の姿をお化けに例え、祖母がユーモアで言ったことなんだ。と、気付いた。あの時は本気でお化けを信じて笑えなかったが、その意味がわかると微笑んでしまう。
おばあちゃん。鏡にお化けが映らないように、ちゃんとお手入れします。
その日から毎日。
祖母のユーモアな忠告を胸に、鏡の前に座って肌の手入れをしている。自宅の鏡からは、まだお化けが出てきていない。
20年前、成人式を終えた直後。引っ越しをした。
親が念願のマイホームを買い、実家から出る気がなかった私は、付いて行った。急な話だったので、今でも急いで荷物をまとめたことを覚えている。
転居後、すぐに必要のないものは引っ越し会社の段ボールに詰めたまま、押し入れの奥に収めた。必要がないものと分類されただけに、無くても困らなかった。次の休みには片付けよう。そう思いながら月日は流れ、とうとう1度も開けられないまま、私は2回目の成人式を迎えられる年になった。
段ボールの存在すらも忘れていた、ある日。
ふとしたことがきっかけで、押し入れの奥に到達した。そこに眠る段ボールを見つけた。マジックで大きく「すぐに必要なし」と書かれた段ボールを取り出す。懐かしさと怖さが入り交じった気持ちで、中を開けてみた。
いったい何が入っているのだろう?
中身は本当にすぐに必要がないものだった。
当時、夢中で読んでいたマンガ、学生時代に集めていたアイドルの切り抜き、雑誌の付録、ワープロの感熱紙とインクリボン、クラスメイトと交換していた手紙など。当時は手を伸ばせば届く場所に置いていたものばかりだった。このまま捨てても支障はない。押し入れのスペースを空ける良い機会だ。部屋も片付く。蓋をして、ガムテープで閉じ直して……。
また、元の場所に収めた。今度はいつ開けるかわからない段ボール。今は本当に必要のないものばかり。
だけど、20年前までの色々なものが詰まっている。
赤色のマジックを手に取り、最も目立つ面に大きく書いた。
「いつまでも捨てられないもの」と。