NoName

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7/14/2024, 12:37:07 AM

私は周りの人間よりも少しばかり出来のいい人間だった。
顔も決して悪くはないだろう、むしろ良い方だ。それに身長も高い方であると自負している。
何をしても平均以上を取るのは当たり前だった。むしろ満点が日常だった。
怒られたことなんてなかった。ただあるのは称賛のみだった。
話を変えよう。勝負といえば、スポーツの世界もそうだが学力でも勝ち負けが生まれる。
私は学力での勝負が一番好ましいと感じる。
なぜって?考えてみてくれ、チームプレイなんてもの、私以外のろくに動けもしなかった無能までもが勝利の快感を得る不必要なものだからだ。
学力での勝負のとき、私は周りの反応を見るのが好きで好きで仕方がなかった。
あの自分だけが優秀だという高揚感。
そして周りの私を称賛しつつも瞳の奥に眠る妬み!あぁ、思い出しただけで顔がニヤけてしまう。そして私は小中高と、何事もなく進学していった。高い進学実績のある学校、素晴らしい教師、切磋琢磨し合うライバル達。私は恵まれている。私は優れている。
私は周りにいる奴らよりも素晴らしい!

   私は今日も、優越感に浸っている。




俺は周りから見ればただただ普通で平凡で、いてもいなくても変わらない。映画では通行人Cなどになる、そんな人間だ。
優秀な人間、周りに意識される人間、なんてものは俺とは同じクラスという共通点しかない、あいつのことを言うのだろう。
あいつはきっと覚えていないけど、俺は昔からずっと同じクラスだったし、いつも席は近かった。だからふと分かってしまうんだ。あいつが俺のことなんてなんとも思ってない。それどころか記憶の隅にすら入れてもらえないってことに。それに気づいた俺は無性に苛立って、あいつの背中を追いかけ必死に勉強にも食らいついて、スポーツは休みの日を削ってでも練習して、もう最後らへんは意地だった。だけどそんな俺の必死の努力もあいつは軽々と超えていくし、俺にはまるで初めて会ったような、あの愛想のいい何も感じていない笑顔を向ける。それがひどく妬ましい。だけれど俺がいくら妬ましく思ったってあいつは何も気にしない、それどころか気づいていてもあのなんとも思ってない笑顔で笑う。なにそれ?俺がすごく惨め。勝手に意識して、勝手に妬んで、勝手に落ちこんで。

 あぁ俺は今日も、劣等感に渦巻かれている。