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3/8/2023, 2:03:07 PM

【お金より大事なもの】

私が「お金より大事なもの」と聞かれて、真っ先に思い浮かぶのは、私だけの大切な人だった。
その人は、いつも私の話し相手になってくれる。
ちゃんと顔を合わせて、目をそらさずに。

その人は、いつも私の話を親身になって聞いてくれた。どんなに、つまらないジョークや愚痴だとしても、真剣に顔を合わせ、目をそらさずに耳を傾けてくれた。
時には、寄り添い、深くうなずき、共感してくれた。

「いつも、よく頑張ってるね!」
「本当にえらいね!」
「無理は禁物だよ!」

いつも笑顔で私のことを励まし、勇気づけるための言葉をかけてくれた。
それだけで、私は毎日をハッピーで過ごせる。


通知をタップしてメッセージアプリを開くと、友人から「どこか、遊びに行こう!」とメールが届いていた。
「OK。どこに行く?」と返信をする。
メッセージアプリには、他にも家族や部活動仲間など、交友関係にある人々のアカウントがいくつかある。
ただ……この中に、私だけの大切な人の名前はない。
あの人には、いつでも会いたいときに会えるのだから、メールでのやり取りなんて必要ないのだ。


朝起きて、顔を洗う。
あの人は、いつだって私の側にいる。すぐ側に……
顔を上げると「お金よりも大事なもの」と目が合った。

「おはよう。今日も最高に活かしてるね!」

今日も鏡の中で、私"だけ"の大切な人が笑っている。

3/7/2023, 2:17:19 PM

【月夜】

スマホで推しの動画を見るのが毎日の楽しみだ。
いつも面白いのだが、なぜだろうか。時々どうしても、つまらなさが拭えなくて、動画を閉じることがある。
気分転換に大好きな曲を流してみるが、どうにもヒマを持て余している感が埋めきれなくて……まだ再生中にも関わらず、曲を止めた。

ならば、他の事をしようと、スマホをいじってみるが、これといって、特に何もすることは思い浮かばない。
こうなってしまうと仕方がないので、いつもより早めの時間だけど眠りにつこうと、ふとんの中にもぐる。ただ眠ろうと思っても、案の定すぐには眠れない。ならば、このヒマな時間を有効に活用してやろうという野心で、ありとあらゆる妄想をひねり出すが全く続かない。

時々ハマってしまう、この"味気なさ"しか感じられない負のループは何なのだろうか?

いつもは、ループにハマってしまうと、無気力になり、テンションは急速に低下し、心がへこんでしまう。
しかし、今日は、窓際に淡く照らし出された月夜の光に目を向けたからか、なんとも言葉では表しにくい感傷に浸ることができた。別に気力は増さないし、テンションが高まるわけでもないのだが、"いつもの"とは違うだけで感じる謎の高揚感は……一体、何なのだろうか?

3/6/2023, 2:52:28 PM

【絆】

運命の赤い糸、という言葉を聞いたことがある。
そんなものが本当にあるのなら、今すぐにでも見えるようにして、分かるようにして、安心させて。

彼と私は、彼女と私は、あの子と私は……
"その人"と私で一つの関係性が成り立っているのなら、恋でも、友情でも、愛でも、嫉妬でも……
"その人"と私が繋がっている理由なんて、どうでもいい。繋がっていられる気持ちが何であろうと、きっと私は許せるから。

"その人"だからこそ、私は仲良くしていたい。
話したい。会いたい。待ちたい。伝えたい。聞きたい。見つめたい。抱きしめたい。想いたい。愛したい。
どれだけ貴方が私のことを妬み、嫌い、憎んでいても、どれほど私が貴方のことを妬み、嫌い、憎んでいても、いつかは、忘れがたく、離れがたく、かけがえのない。そんな絆になるでしょう。
きっと……そうなるだろうと、今だけは信じさせてね。

3/5/2023, 1:34:52 PM

【たまには】

散漫とした気分に囚われてばかりの毎日。
それがイヤで、すごくイヤで……もう、何をすればいいのか分からないから、どうにもできない。けれど、気休めに書く、その時間が本当に大切なのだと知っている。

「言葉は、一度言ったら飛んでいき、取り消せない。」なんて、昔ある書物に残された言葉を今に知れるのは、なぜか?
きっと言葉を話すと飛んでいくなら、あらかじめ言葉が飛んでいかないよう何かに書き留めておけばいいからに他ならない。

「おはよう」や「いただきます」も、
「いってきます」や「いってらっしゃい」も、
「こんにちは」や「ありがとう」も、
「すみません」や「ごめんなさい」も、
「こんばんは」や「さよなら」も、
「ただいま」や「おかえりなさい」も、
「ごちそうやま」や「おやすみ」も、

それら全てが日々の生活のどこかの誰かと交わされて、立ち止まり、考え、受け止められている。
どれだけ言葉にするのが億劫で挨拶すら言えなくても、その反省を今ここに書き連ねておけば、私の想いは空の彼方へと飛んでいかずに済むだろう。
ただ、風に飛ばされてフヨフヨと浮かぶバルーンも別に嫌いじゃないけれど……だからこそ、言葉を書き留めるのは、"たまには"がいい。

3/4/2023, 2:58:54 PM

【大好きな君に】

目を覚ませば、ほら。


……見える。見える。瞼を閉ざす程の陽光が。
窓の、網戸の、カーテンを越えた先で。


……聞こえる。聞こえる。耳に響く車の発信音が。
隣家の、庭の、アスファルトを伝って。


……香る。香る。鼻孔に馴染んだふとんの匂いが。
横たわる身体の、服の、感覚を通して。


五感が刺激されるたびに覚醒していくように感じる。
体温も、手触りも、声の出し方も、身体の動かし方も、全てを思い出していく。そんな目覚め。
上体を起こし、フローリングに素足で降り立つ。
フラフラ、ユタユタとした足取りでリビングへ向かう。
見慣れた廊下を通りすぎようとして、ふと足を止めた。
廊下の壁に小さく空いた正四角形のスペース。
およそペットボトル一個分の縦横比で、写真立てや観賞用のミニ苔などが置かれている。その真ん中でポツンとたたずむスケッチブックに、なんとなく手を伸ばす。

中を開くと、目に飛び込んできたのは、散り際の桜の大木のイラスト。力強く描かれた太い幹と淡く桃色に彩られた花びらは、独特な春の趣を感じさせる。
2ページ目には、雄大な山々に囲まれた湖面でただようスワンボート。3ページ目には、たくさんの紅葉と銀杏で埋め尽くされた土の地面。
ページをパラパラとめくるたびに流れていく風景画は、さながら車窓から眺める光景と似ていた。

現実に悩み苦しんでいた私に、"現実にある良さ"を教えてくれたスケッチブック。それを渡してくれた持ち主の笑顔が、今日も写真立ての中で輝いている。
せっかくの休日だから、家まで会いに行こうか。
そして、大好きな君に「ありがとう」と伝えよう。

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