お題:明日への光
※ポケモンレジェンズZA二次創作
※ユカリゾーンで避難経路を確保するユカリ様を見たかった
「僕も色んな人と助け合って暮らしてましたけど、顔見知りならともかく、住民全員で譲り合って避難しろなんて無理な話だったんですよ」
ミアレシティに長く身を置くミタ氏は、街のシンボルのプリズムタワーが暴発事故を起こした際、訳も分からぬまま避難所へ向かったという。
「その時はとにかく安全な場所に行きたいとか生きなきゃいけないとか、目の前のことで頭がいっぱいだったんでした。僕だけじゃなく、皆そうだったと思います」
真夜中、突然スマホの警報音に叩き起こされ、プリズムタワーが暴走して危険だからと避難を呼び掛けられた。避難中に見た街のシンボルは異様な光を放っていた。「ここは知っている場所じゃないんだ」と直感的に思った。
パニックになって前の人を押し退けてまで走る人もいて、ミタ氏も後ろから肥り四肢の男に突撃された。
「結構ヤバい状況でしたよ。あ、これ雪崩れるんじゃないかって」
人混みの中、ミタ氏はバランスを崩し周囲の人を押し倒してしまった。
そんな時だった。突如目の前にホログラムの壁が出現した。普段野生ポケモンを囲っている緑色のとは違い、目がチカチカするほど鮮やかなピンク色のホロだったという。
「『セレブが独自にホログラムを濫用している』なんて、都市伝説だとばかり思ってました」
「いつの間にか俺の右隣と人ひとり挟んだ向こう側に、見るからにご子息ご令嬢って人たちがズラーっと並んでて、その中心にいたんですよ。街に住んでたら知らない人はいない財閥のご令嬢、ユカリ様が」
姿形だけなら、場違いに召喚された妖精のようだったとミタ氏は語る。
『このわたくしの住む街で、二次災害は起させませんわ。さあ、皆様! このまま歩いて避難所に向かってください』
鈴を転がすような無邪気な声なのに、ユカリ様には有無も言わせないオーラがあった。
「隣の人とか街の状況とか、考える余裕なんてなかったはずなんですけどね」
セレブ達に補導される中、ミタ氏は昨日何気なく立ち寄ったカフェが瓦礫に押し潰されているのを見たという。
「一刻も早く逃げなきゃいけない状況だと思っていたのですが、よく分からないピンク色した壁が生えて呆気に取られるばかりで……焦ることすら忘れてました」
自分の命ばかり考えてたのがバカバカしくなって、言われるがまま避難所まで歩いていったという。
「セレブって何を考えているかよく分からなかったんですけど、先導を歩いているのを見て、ほんのちょっぴり『この人がいるなら大丈夫だな』って思ったんですよね」
お題:星になる
じーちゃんから聞いた話。ボクはあんまり覚えてないけど、おばーちゃんが亡くなって間もない頃、星空を見てたら突然「おばーちゃんはあそこにいるの?」って聞いたらしいんだよね。「そうじゃよ。あそこからわしらを見守っているんじゃ」ってその時は返したんだけど、仕事にばかり目を向けていたからかな、もっとおばーちゃんと話せばよかったってかなり参ってて、ポロッと「お前のところに行ければなぁ」って零したら、ボクが涙目で「じーちゃん粉々になっちゃやだー!」って言ったんだって。どうやら、夜空の星全部がおばーちゃんだと勘違いしていたみたいで、可笑しいやら嬉しいやらでひたすらボクの頭を撫でたんだとさ。
星空を見るたびにこの話されてさ。正直蒸し返されて恥ずかしいんだけど、まあじーちゃんが話したいならそれで良いかなって。そんな話。
お題:夜空を越えて ※俳句
霜の夜 白を纏いて 飛ぶ烏
お題:雪原の先へ
オオヤマネコという種族は難儀なものだ。雪山に住みついた先祖は吹雪を耐える毛皮を手に入れたはずなのに、炎天下では暮らせない身体を残していった。
どうかしているとは思っている。新都市開発に向けた設計図を盗み取り、考案者を塗り替えようとするとは。
だが、どうにかしなければ、愛する妻子や親類が肩身の狭い思いをするのは目に見えている。私が投資家にならなければ、家族は今上に苦しんでいた。ただでさえ、今も暑さに耐えられないはずなのに。
全ての動物達のために設計された楽園に、我々のような極寒で暮らす生き物の居場所はあまりに少なかった。少なすぎた。
雪原の先へ、さらに雪原を広げよう。我々の子ども達のために。家族のために。そのためなら、私はどれだけ汚れようと構わない。
(※映画『ズートピア2』を観てきました。)
お題:消えない灯り
突如、明良はカフェの店員が手渡してきたコーヒーを無造作に振り払った。盛大な音と共にコップと同じ高さに詰まった氷とアイスコーヒーが床に散乱する。
そんな想像をした。すべって来た、が正しいかもしれない。気付かないうちに溜まっていた静電気がふとしたきっかけで身体から流れ出ていくように、思いもしない想像が突然頭の中を「すべって」来る。そういう時は大抵、無意識に疲れを感じているのだと、明良は知っていた。
長閑な日差しが心地よい十四時頃。思ったより早く用事が済み、残りの時間を緩やかに過ごそうと思っていた時だった。カフェ選びに悩みすぎたからかもしれない。レジ列の先頭に立ち、ようやく注文ができると思った最中に「すべって」来た。
「──お客様、いかがなされますか?」
メニュー表に視線が縫い付けられていた。一向に注文しない私を見兼ねてか、店員が慇懃に尋ねてくる。注文は決めていたはずなのに、頭の中はそれどころではなかった。こんな調子では、イートインなんて出来そうにない。
「アールグレイティーのホットを一つ。持ち帰りで」
「かしこまりました」
順当に支払いを終えた後、すぐさま取っていた席からコートをひったくり受取カウンターの前に立った。いくら手際良く動いても「すべって」来てから頭はずっと薄ぼんやりしている。
やがて紙コップを受け取ると店員の声を背に外へ出た。
陽気な日差しの下、木枯らしが身体を吹き付ける。当然だが、今まで私の中に「すべって」来た想像が現実になったことは一度もない。それは分かっている。これからもきっとそうだ。それでも──。
いつの間にか、紙コップを持った手を片方の手がさすっていた。水面に投げられた石のように、「すべって」来た想像が不安を波立たせていく。堪らなくなって歩き出した。意味もない危険信号が私の中で繰り返し点滅していた。