周りは名字が由来のあだ名で呼ぶから
本名なんて忘れられてると思ってた
私の下の名前、知らないでしょ?
そんな感じでニヤっとからかったら
「摩耶花でしょ?」
誰かが話してるの聞いたことあるよ。
さも当然という顔をされた。
即答してくれて、素直にうれしかったな。
たまたま耳にしていてもおかしくないか。
当時、私のことを摩耶花と呼んでたのは
ごく一部の友だちくらいだったけど。
いきなり呼び捨てされただけなのに
それから同期のことが気になって…
私ってつくづく単純なヤツだなあ。
実習で何週間も不在だった
同期が帰ってきたのが嬉しくって
すぐにおかえり!と声をかけたの。
「いない間、みんな寂しがってたよ〜!
実はね、私も寂しかった〜!」
気づけば、本音がポロッと飛び出ていた。
めんどいが口ぐせでいつも気だるげ。
なのにこのときのあなたったら、
目をまんまるにして、ピタッと一時停止。
ゲームのロード画面みたい?
「......ありがとうございます」
ボソボソな声でぺこりとお辞儀された。
同期なのにいまさら敬語でお辞儀?
黙り込んじゃってどうしたんだろう
まあ、相変わらずの無表情で
何を考えてるかわかんないんだけどね。
でも、どこかソワソワしている気がしたから
照れ隠しってことにしとく…!
理由はわからないけれど
惹きつけられるひとだなって思っていた。
見つめるほどに、声を聞くたびに
心がモヤモヤしていた。
ただの同期でいたかったから
嫌われるのが何より怖かったから
この恋は秘めておくことにした。
めんどくさがりだけど、
いざというときは頼りになる。
本番にはちょっぴり弱くて
褒めるとわかりやすくそっぽを向いちゃう。
いろんなあなたを知っている私は
特別なんだと思い込んでいたけど、
こんなにすてきで優しいひとが
私なんかと一緒にいてたのしいのかな
と思うたび、不安に襲われる日々。
モヤモヤを話す相手もおらず、
あてもない私はこの名もない感情を
ぐしゃっと握りつぶして、無かったことにした。
ほんとは知っていることをわざと質問して
口実考えて電話した日もあったっけ。
たった一言、お返事が来るだけで
はしゃいで舞い上がった。
そっけない返信しかできないひとだから
好みの音楽とくだらない話ばかりしてた
2人きりの放課後のほうが好きだったかな。
募る想いを心の中にしまいこんだから
いまも届かないまんまだけど、
あなたのいた学生時代、たのしかったな。
プリキュアになりたい
ケーキ屋さんになりたい
みんな友だちのマネして書いた
違うんだけどなと思いながら
なりたいものがハッキリしないの
今もむかしも変わらないね