「ねぇ遥〜?学校行かないの?
お母さんもう仕事行くからね。朝ご飯作っといてるから」
あァ、もう朝から五月蝿いな
2階の私の部屋の布団まで響くってどんな声量してんの?
うちの母親はお父さんが死んでから前にも増して私に構うようになった
俗に言う『過干渉』って云うの?
此方からしたらいい迷惑だ
無駄に心配してくる
心配してくれるだけいいじゃないと思う人も多いだろうけどさ不登校には不登校なりの理由が有るんだから放っといて欲しい
朝ご飯だって気分なんだし
全部吐いちゃいたくなる時が有るって分からないの?
今日はお気に入りのマーマレードのトーストだったから食べるけど
時刻は10時30分
NEWSも、アニメもやっている時刻だ
このままだと憂鬱な気分に飲まれそうだったから適当にTVアニメをつける
「やった!好きなアニメの再放送がやってる
こんな時間に気分にやってくれるなんて運命かも」
嬉しい、
これを久しぶりに見れるだけで生きる気力が湧くものだ
良く思う、アニメって凄い
テレン。テレン……
全く人が気分上がってるって時に……………
TVを見ると『速報』の2文字
続いて隕石の予報、詳細が流れてくる
えっ?
地球滅亡?氷河期?……え?
隕石…………明日?急すぎない?皆、TV見てる?
ちょ、ちょっと待って、どうゆうこと
頭が回らない
私ただでさえ頭悪いのに
いやいや、私何考えてんの?地球滅亡しちゃうんだよ?
嘘かと思いたくて思わず5度見くらいはしたけど
どうやら嘘じゃないようで足が震えてきた
遅れて、スマホがバイブする
母からの電話が来ている
咄嗟に私はスワイプした
「も、もしもし!お母さん?」
「あ、もしもし遥?
今、お母さんの会社から帰宅しなさいって言われたから帰る
遥は避難する支度してて!!!」
………………………うっわぁ
いよいよ現実味が増してきたんだけど
さっきまで逃避行で5度見もしてしまっていた過去の自分を殴りたい
_____________________
否、なんて言うんだろ
唐突に冷静になってきたんだけど
よくよく考えてみれば今更もうどうでも良くない?
明日には塵に帰るんだから
今、この瞬間人間が1人消えても警察は機能しないだろうし
誰も気にしない
あ〜そんな事考えてれば腹たってきたな
今朝のことも
学校での視線も
お父さんの事も
友達の事も
今この世界のどこかで私の嫌いな奴が呼吸をしているのだと思うと腹が立ってきた
お父さんを殺した奴が今も逃げ続けているのだと思うと
犯人の事も、まだ捕まえられない警察にもイライラしてくる
もう、疲れたな
明日には世界が滅んでんなら
今迄、自分のせいだと思ってきた
学校の問題も
お父さんの問題も
友達の問題も
環境のせいにしよう
人のせいにしよう
お母さんが帰ってくる前に書き置きをして家を出よう
バレたら面倒だもん
そう思って私は家を後にした
早く、速く私の足よ速く回転して走って
速く神社に行って神頼みしなきゃ
嫌な奴がこの世から皆消えますように
1人残らず死にますように って
そうしたら少しだけ旅をしよう
私の人類最後の8 時間の逃避行の旅だ
もう誰にも邪魔されない
私が明日世界がなくなるとして、
願ったことは人間らしさが僅かに残った醜い私情でした
この酸化した世界にさようなら
一足先に私は逝きます
そうして私は神社の柱に縄を括って短いようで長かった生涯を閉じた
君と出会ったから私が何か変わるわけではなかった
いつか夢みた優しくて誰にも好かれる主人公なら
違かったかもしれないけど
君も私も、救済を求める、主人公の助けを夢見る
汚くなった人間
でも、誰も救ってくれないなら君と逃避行位はさ、してもいいよね
財布を持ってナイフを持って携帯ゲームも、カバンに詰めて要らないものは全部壊していこう
あの写真もあの日記も今となっちゃもう要らないさ
人殺しとダメ人間の君と僕の逃避行の旅だから
そして私達は息苦しいこの世界から逃げ出した
この狭い狭いこの世界から
家族もクラスの友達も全部捨てて君と2人で
守れるかも分からない、保証できない
『遠い遠い誰もいない場所で2人で死のう』
なんて口約束を交わしてくれて
もうこの世界に価値など無いよ
人殺しなんてそこらじゅう湧いてるじゃんか
君は何も悪くないよ
君は何も悪くないよ
と言い聞かせてくれた貴方は、私のいつか夢みた主人公かもしれない
君とは似た者同士で、一緒にいても何も変わらないままだと思ってたのに
いざ外に出てみれば貴方は眩しかったね
私の事を引っ張ってくれる主人公
私がヒロインに慣れたら良かったんだけど
人殺しには荷が重かったなぁ
君は光り輝くとこに居ていいよ
君といるとなんだか私が「人殺し」が目立って
自分が醜く思えるの
だから、さよなら
そして私は首を切った
変なの、なんで君が泣くのさ
これからの人生笑わなきゃでしょ?
ほら、前向いて
きっと君は私と出会っても何も変わらなかったよね
否、変わってくれてたら嬉しいな
そんなに泣いてくれるんだから
そう受け取っても仕方ないよね。許して
生きて、生きて、そして死んで…………
私の最後のことば受け取って、くれたかな
あの夏が飽和する
昔観た映画にさ
ある少女が大地に寝転び雲が流れている様子を見ているシーンがあったんだよ
一緒に見ていたお母さんはね。隣で空がきれいと言っていた
劇場の周りの人も綺麗と言っていたな
でも、私はどこか憎らしく思えてしまった。
私の心とは裏腹に快晴な空が憎らしく思えて、
そんなふうに考える自分も凄く嫌に思えた。
5年が経って見てみても私の気持ちは変わらなくて
同じ席で、ポップコーンの味で
まぁさすがに見ている人は違うけど
でも、やっぱり目につくのは隣で見ている人
今はやっと出来た友人と見ることができている
あの時みたいに憎らしくは、やっぱり見えちゃう
でも、前回よりは幾分か素敵だ
…………同性の女友達
そう思ってしまったのは
恋の始まりだと気づいてしまうのは
余りにも酷だった
その綺麗な横顔は私の心を1層汚く見せた
「ねぇ、最近ね職場に面白い後輩が来たんだ
私が拾ったんだよ?」
凄く真面目で今は成長期だからいっぱい物事を吸収しようと頑張ってる
彼は学校に通えなかったからね
それに、凄く真面目なのに時々素っ頓狂で此方が驚くようなことを言うんだよ?
流石の私も予想が出来なくて笑ってしまう
ねぇ。………………ねぇ、
「ねぇ、私。君が言った通りに孤児を救ってるよ
私らしく、生きてるよ
君に胸張れるように……
あの時君がくれた言葉は今も私の中の片隅に置いてある
大事にしまってる
偶にね、良い人に。善人に成れてるか心配になるンだ。
でも、でもねそんな時君の言葉何度も思い返しては、心で繰り返してるんだよ?
そして、その度、力になる」
あの時。こちらに導いてくれてありがとう
私は前より生きる理由が見つかる気がするんだ
もう少しだけ探してみるね
「先輩〜?何処ですか〜?」
ふふ、
「可愛い後輩が呼んでいるようだ
行かなくてはね」
本当にありがとう
そう思いながら私は彼の墓をそっと後にした
彼の好きだったお酒を置いて…
なんで優しくしたの?
本当はどう思ってたの?
いざ君から離れて見れば、思い出すのは優しい君ばかりで
お願い…………
もう私を光で照らさないで
もう優しくしないで
偽りでも優しくしてくれてありがとう