笑顔笑顔。
私はいつも明るくて元気な子
大変なお仕事は進んでやるし
疲れた姿は見せない
辛いお仕事もお手の物!
みんなが気づかない仕事も
お手伝いも
なんでも引き受けるぞ!
みんなが辛い思いして
空気が悲しくなるくらいなら
これくらいお手の物!
今日も元気にご挨拶!!
笑顔、笑顔
いつも元気だね。
明るくていいね。
優しいね。
いつもありがとう。
お任せください!
とんでもございません!
こちらこそありがとうございます!
皆さんに比べたら
全然大した事ないですよ!
…笑顔
明るく
元気
涙
疲れ
胃の痛み
-何気ないふり-
「三途の川はフェリーで渡るの」
『随分と贅沢だねぇ』
人生最後に観る映画を眺めながら
隣で別の映画観る人とお話をする
「棺の中に推しのブロマイド入れてもらってね…」
『豪華だねぇ』
「鎮魂歌はもちろん推しのデビュー曲」
『だいぶ賑やかになりそうだねぇ』
長く観ていた映画もそろそろ終盤。
流れてくるあまりにも長いスタッフロール
「まずはおじいちゃんとおばあちゃんに
挨拶でも行こうかなぁ」
『親はその次かい』
「そしたら恩師に会いに行くよ」
『覚えているといいねぇ。』
「最初にお供えしてもらうものはラーメンさ。」
『また頓珍漢だことだ。』
隣の映画はどんな物語だったのかな
終わり良ければ全て良し
心が穏やかなのはその考えがあるからなのか
「眠たくなくねぇ」
『私らずーっと寝てるんだろけどねぇ』
歯がなくてお喋り出来ないのも
心臓が弱い事も忘れて話す
なんとも穏やかな時間
「寝ようかね」
『そうしようかねぇ』
いそいそと寝る支度をする
しばしの沈黙。
『そうそう、もし私がねぇ、三途の川を渡るならねぇ』
「ん?」
瞼が重くて仕方がない
『私ゃ、カヌーを漕いで渡るよ!』
「あっはっはっ!!そいつはいいねぇ!」
若返ったように笑う
「お前さんのそんな姿が見れたらいいねぇ」
『すーぐにでも見せてやるよ』
なんだかとっても楽しいじゃないか
もっと話していたいけどそろそろおやすみ
「楽しみにしてるよ」
返事はない
最期のその先に楽しみができた
推しのブロマイドとラーメンと
隣のカヌー姿
ワクワクしながら
いよいよ最期の眠りにつく
夢を見るように
おやすみ。
-ハッピーエンド-
目が合う。
多分ただ目があっただけ。分かってる。
でも目が合う事が怖くてしょうがない。
なにが怖いのか分からないけど、
視線、距離、空気、動き、その全てが怖い。
目があった相手はなにも悪く無いのに
申し訳ないほど怖い。