こうあればいいな、こうだったら嬉しいなと
思い描いてしまうのがわたしの思う未来。
見えないからこそ、思い描いてしまうのかも。
叶わないことばかり、思い描いているもんね。
現実みなよ。
「見えない未来へ」
「うわっ………びっくりしたぁ…ラーレ、まだ寝てなかったの?」
ふと手元から目線をはずしラーレの巣を見上げると、まばたき1つせずこちらを見ているラーレと目が合った。
「ふふ、夜行性だねぇ、私と一緒だ。おいでよ。」
腕を伸ばすと素直にやってきて頭をすり付けてくる仕草が愛しくて、反対の手で頭を撫でてやるとその手のひらにぴとりと頬を寄せてくれた。
「見て、ここまで編んだんだよ」
不思議そうに見つめる瞳に優しくもうすぐ編み終わるマフラーを見せてみる。
ちょっと濃いめの赤くてふわふわな肌触りのマフラー。
「誰のだと思う?…ヒント。私のは去年買ったクマのマフラーがあるでしょ?あれね、しゅうちゃんも同じの持ってるんだよ。…だからこのマフラーは………ラーレとテムズのおそろいなの。」
完成して2羽がおそろいのマフラーをしているのを想像する。………あぁ、なんて可愛いのだろう。
今年は寒くなるのが早そうだし、早く完成させたいけれど。ラーレに合わせてみるとどんどんオプションを付けたくなっていく。
「ふふ……飾りのリボンとかも付けちゃおうかな。テムズ嫌がるかな?ラーレはリボン好き?」
それからしばらくの間、静かで、でも楽しげな声が寮の廊下まで優しく響いていた。
HPMA side.T
私はあと何回君に救われるのだろうか
あと何回、救われていいのだろうか
あと何回、なんて数えなくていいのだろうか
「おつかれさま」
机の上に広げた書類から目を離して見上げるとお風呂上がりでまだ髪の濡れている彼女がいた。
「うん、お風呂さっぱりした?」
「したよ~。きりのいいところで君もお風呂にしなよ、ほかほかだよ」
「そうしようかな。」
散らばった書類を順番に重ね、開いたページには付箋を張りテーブルの隅へとひとかたまりにする。
少しかすむ目を何度かぎゅっと閉じていると、口に冷たくて固いものが唇に触れた
「梨だよ~、甘くて美味しいから食べて」
シャリ、と噛むとじゅわっと甘くて瑞々しさが口の中に広がった。
カラカラだった喉に染み渡るように。
「おいし…え、これお風呂上がっても残ってるよね??」
「残しておいて欲しい?」
「うん」
「じゃあ早く入っといで~、なくなる前にね」
「あ、そういうかんじ?急ぐ!」
ニコニコとすでに何口目かの梨を頬張る彼女にせめて一口は残しといて、と声をかけておく。
でも多分、彼女は満足するまで食べて皿を空にするんだろうな。あのニヤニヤは絶対にそう。
そしてヤバイ!と思って2個目の梨を切らずに丸ごと出して「残しといたよ!」と自信満々に言うのだ。
悪知恵ばかりなんだけど
そんなところが可愛いんだよね。
「梨」 和やかな愛情
どこまでも続く水平線に永遠を願った。
なにも返ってはこないけれど
確かにまだ続いている。
終わらない時間がまだここにある。
「どこまでも」