深夜の降り止まない雨は嫌いだ。
　秒針より虫の音より何より、もっとも私の眠りを妨げる。
　また耳栓がどこかへ行ってしまったから買わなければ。

　あの頃の私へ。
　大事なものを浅いポケットに入れないこと。
　ぼんやりしながら歩かないこと。
　空腹でも大盛りを注文しないこと。
　交通系ICカードの残金に気を配ること。

　でもいざとなったら忘れちゃうんだよなぁ。

　逃れられないとしても逃げたい。
　そうやって逃げ回っていたらいつか追い付かれるのはなぜだろう。
　ずっと執拗について回る。どこにも行かない。
　見失ってくれたら良いのに。疲れ知らずなんだ。

　また明日。
　明日も会えるから、今日はこれでお別れ。
　明日って言ってもきっと十数時間後。
　大半が睡眠でスキップされるから、実質数時間。

　そんな時間すら惜しい。
　だから「また明日」を何度も繰り返して、なかなか本当のお別れを出来ないでいる。

　透明でありたい。
　でも透明にされるのは嫌。
　いてもいなくても良い存在になりたいけれど、他人からそうであれと強いられるのは嫌。
　ならいっそ特大の存在感で邪魔してやる。