白桜

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4/7/2025, 3:22:13 AM

人は、生まれてくる時に「人生の地図」を持ってくる。
皆その地図に沿って人生を歩んでいくんだけど、私の地図は、最初からボロボロだった。海岸に漂着した海賊の世界地図みたいにボロボロで、原型を留めていなかった。だから人生なんて上手くいかなかったし、嫌な事ばかり引き摺っていた。
「いっそのこと死んじゃおうかな」
そう思った私は、地図を破り捨てることにした。
高いビルの屋上に立ったとき、綺麗な東京の夜景が視界いっぱいに広がった。
私は思った。
地球にも、命はあるのだろうか、と。
うん。きっとある。感情は天気と風、体温は季節、呼吸は地震だもの。
更に私は思った。
地球にも、人生の地図はあるのだろうか、と。
うん。きっとある。だって地球の人生の地図は「時代」だから。
そこまで考えたとき、私は本当に自分のことがちっぽけに思えた。
私が死んでも、いなくなっても、地球は、まわりの人間たちは気にせず地図に沿って進み続ける。なぜか、悔しくなった。理由は分からないけれど、胸の中にあるナニかが熱くなっていく。
気が付けば、死にたいという気持ちが少し薄れていた。それと同時に、私のなかにあるひとつの考えが浮かんだ。
─────────ここで破り捨ててしまうよりも、ボロボロの地図が嫌なら新しい道を足していけばいい。
そうしたら、きっと出来上がると思う。
新しい、地図が。
私はビルから降りて、地図完成のために必要な、新たな道を探す旅に出た。


テーマ「新しい地図」
題名『廃少女の死』