10年後の私から手紙が届いた
「友人を殺した」
そうしたためられた手紙には私の名前が書かれていた。そして「すぐに理恵と縁を切れ」と続いていた。
私は手紙をごみ箱へ捨てた。
まさか、ありえない。
私が親友である理恵を殺すとでも?
忘れることにしよう。
こんなにに大切な親友を殺すだなんてあり得るはずがない。たとえ10年経とうとも。
ありえない、よね?
バレンタイン
貰えないなら!!
買えばいいんだよ!!
自分で!!!
待ってて
「待っててください。今行きますから!」
そう言うと、電話ごしに息を飲む音が聞こえた。
「や、やめろ。もう俺につきまとわないでくれ」
狼狽えるような抑揚の声に私は首をかしげた。つきまとう、とはどういうことだろう。
「恥ずかしがらなくても良いですよ、先輩。それじゃあ切りますね。すぐにいきますから、本当に」
まだ先輩の声を聞いていたい気分だったけど、それは直接会ってからにしようと思った。なんせ先輩は何かに怯えている様子だったからだ。
通話を切って窓を見上げると、カーテンがサッと閉ざされるのが見えた。
そういえば、先輩は前から少し妄想が激しい所があった。それに伴って言葉がキツくなるとこもある。
「お前がやったんだろ」とか「ストーカーだ」とか。
おかしな話だ。ストーカーも何も私と先輩はお付き合いしている仲なのに。
付き合っていれば携帯だってチェックするし、お互いの住所や連絡先だって知ってて当然だ。通勤路だって知ってるし、今どこで何をしてるかだって‥‥。
もしかして先輩は、私に何か知られたくない事でもあるのだろうか?
ふと、「浮気」という文字が頭をよぎった。
私はそれを振り払うように、勢いよくアパートの階段を駆け上がった。
夜の風が冷たく肩に吹き付けてくるのがとても辛い。でも、長時間待ったかいあって先輩が帰ってくる様子を見ることができた。それだけで、寒さなんて忘れてしまいそうだ。
先輩の部屋は廊下の一番奥の角部屋だ。訪れるのは初めてじゃないのに、この廊下を歩いていくのはいつも緊急してしまう。
ドキドキと心臓が跳ねるのを感じながら、扉の鍵穴に鍵をいれた。
この部屋の中で、先輩が待ってる
伝えたい
「離婚しよう」
そういったあの人のカップに白い粉末を混ぜた。
これで少しは伝わるだろうか。
私の殺意が。