優しくしないで
これ以上あなたといたら、私はダメになる。
あなたは優しいし、気さくだし、話もうまい。
そんな人を好きにならないはずがないでしょ?
私は解っている。あなたには、好きな人がいる。
ね?そうでしょ?
好きな人のことなんて、すぐにわかる。いや、分かりやすすぎる。
だってあなたは私と話しているときに、あの子を目で追いかけてるでしょ?
そう。私がどれだけ想っても、貴方にとって私はただの友達。
でもね、私はこの心に嘘はつきたくなくて…
貴方があの子を目で追いかけているときに、私はあなたの邪魔をしてしまう。
だけどあなたは私の方に向き直り眉毛を少しだけ上げて"ん?"とキョトン顔をしながら私の話を聞こうとしてくれる。促してくれる。
ただの友達なのに…と越えられない壁にまた気づき私は下唇を上の歯でキュッと噛む。
…"ねぇ?優しくしないで?"と口から溢れそうだったこの言葉をまたグッと呑み込む。
楽園
「おーい!!こっちこっち!早く来いよ…」
セミがミンミンうるさい季節に君が青春をくれた。
もう今年で最後の高校の夏休みに入ろうとしていた。今年までも、"高校生らしいことをせずに夏休みが終わるのかぁ"そんなことを考えていたら前の席の彼が私の方に振り返り
「高校生らしいことってなに?何をしたら、高校生らしいの?」と。心の声が漏れていたようだ。でも確かに高校生らしいことってなんだろうと頭を悩ませ私は
「う〜ん…なんか、いつもと少し違う何かが起きてほしい?みたいな?」というと
「いつもと少し違うってなんだよ…あっ!そうだ、夏休み予定空いてる?空いてるならさ、俺に付き合ってよ。できれば、夕方くらいからがいいんだけど。」と。
私は、なんで?という疑問と共に、スマホのカレンダーを見て一応何かが起きそうな感じがするので予定を言う。
「この日がいいかな。」それだけいうと、
「じゃあ、その日7時くらいに学校の生物室来て!」そう約束して彼は笑顔で去っていった。
約束の日
私は学校の校舎にこっそり入り、生物室へと急いだ。すると、生物室前で彼が座って待っていた。私は、小走りで
「ごめん。おまたせ。」そう言うと
「またせ過ぎだよ。よしっ!俺がいいって言うまで、廊下で待ってて!」そう言い、生物室に入っていった。私は、なぜこの時間帯に呼ばれたのかわからない。頭を抱えていると、
「いいよ!」
そう彼に言われて入ると、そこにはきれいな星たちが天井に散りばめられてた。そうか、彼は星がきれいに見える時間に予定を立てていたのかと思ったのと同時に思わず心の声が声に出ていた。
「綺麗…」そう言うと彼は照れ臭そうに、
「だろ?いやぁ、お前がいつもと違う高校生最後の夏休みがほしいとかいうからさ、確かに俺も最後くらい青春したいなと思って。」と。私は彼の話を聞きながら生物室で天体観測に夢中になっていた。すると彼も
「やっぱり、綺麗だ…」そう言った。その時の私は気づく事ができなかったが、彼の言葉は星に向けられた言葉ではなかった。
あの日から、私は天体観測にハマり夏休み後にも続いた。授業が終われば、私は急いで支度をし家に帰る。それから、夕方くらいに学校に忍び込む。本当は、この時間に生徒が校舎の中にいることは禁じられているが、このドキドキもまた楽しかった。生物室の近くの廊下に差し掛かると彼が生物室から顔を出し、
「おーい!!こっちこっち!早く来いよ…」と手招きをする。私は、
「うん!」と元気よく返事をして走る。
あの日から私は、生物室に行くのが凄く楽しみになった。あなたと一緒に見る星空はとても綺麗だった。その時だけは、生物室がまるで楽園のように感じた。
刹那
日常生活で、生きづらさを感じる。
我慢できないかもと、感じ睡眠薬を大量に飲む。
…
目を閉じたら一生現実に戻れない。
それを知っていても、私は目を閉じる。
今までの思い出が走馬灯のように蘇る。そうなれば、
刹那にも死にたくないな…そう思ってしまう。
「あなたが感じる刹那的瞬間はいつですか?」
善悪
私は、彼が好きだ。世界で一番…
…優しかった。
…男女問わず皆にモテた。
…運動も出来た。
…話もうまかった。
…料理が上手い。
…笑顔が素敵だ。
…人をまとめられる。
…頭もいいと思う。
…絵も上手い。
そんな、すべてを持ったあなたにイライラした。だけど…私はあなたに見惚れていた。だから私はあなたみたいになろうと努力した。努力すればするほど、あなたの事が頭から離れなかった。私は、告白をした。でも、振られた。どうしても嫌で何とか関係を持とうと思ったけど、無理だった。"しつこい。うるさいんだよ。視界に入るな。"と言われた。私は、どうすればいいのかわからなくなった。あなたに嫌われたくないし、あなたのことを諦められない。なのに、私のことを視界に入れたくないって…
気がつけば私は善悪が分からなくなり彼の背後に走りカッターナイフであなたを殺していた。笑みが止まらなかった。だって、
"これからずっと一緒だもん。"
流れ星に願いを
私はいつも虐められている。だから、学校には友達はいない。だけれども家に帰ると、愛しのリリがいる。リリはうさぎの人形だ。学校でのストレスを家に帰ってからリリに話す。リリはいつも笑って話を聞いている。
ある時私はクラスメイトに、殴られた。私の何かが気に食わなかったらしい。いつもなら、言葉の暴力だけなので我慢できるがこの日は駄目だった。授業が始まる前に、トイレに逃げてしまった…。
その日の夜、いつものように窓辺でリリに話していたとき綺麗な流れ星が降った。私の心とは裏腹にキラキラ輝く流れ星に願いを込めて、
「リリが私とお話できますように。」と手を合わせて唱えた。すると、
リリが
「ねぇ、あなたを殴ったのはだあれ?」と怖い顔で私に聞いてきた。私は嬉しかった。だって、リリが私のお話をずっと聞いてくれていたと知れたから。だから私は、
「クラスメイトの…ちゃん」と言うと、リリはキッチンへ向い、その後玄関から姿を消した。その夜、リリは帰ってこなかった。次の日いつものように学校へ登校すると、先生たちが忙しそうだった。クラスもざわざわしていた。その日、私は家に帰ってからニュースをつけて理解した。昨日の深夜にその子が何者かに殴られ、殺され、その後に体をバラバラにしてトイレの中に入れられていたらしい。
私は部屋に戻ると、ベッドにダイブした。ふと窓辺に目をやると、
リリが血まみれでこちらを見て…笑顔で座っていた。