深夜徘徊猫

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1/10/2025, 9:30:08 AM

青のケンキュウジョ 「星のかけら」

「こんばんはー。かき氷いかがです?」

 深夜、仕事帰りふらっと寄った海近くの道路。青いエプロンが可愛らしい少女にそう言われた。

「かき氷?こんな深夜に?」

「まぁまぁ。お代は取りませんのでおひとつどうです?」

 正直いろいろ尋ねたいことはある。それを言葉にしようとしたらそこで留まった。なぜなら少女が取り出したびんの中には沢山の光り輝く【なにか】があったからだ。私はうっとり見惚れてしまった。

「それ、なんですか?」

「【星のかけら】です。今日の夜空は青が深いですからね。おかげでこんなにも綺麗な子たちが取れましたよ。」

「何に使うんですか?」

 まず、星のかけらがあることについて尋ねるべきではあった。しかし、その子の目があまりに確実で、ついそのまま信じこんでしまうのだ。

「かき氷です。いかがです?」

その真っ直ぐで青の瞳に、私は頷いた。

 するとその子は星のかけらをおそらくかき氷機と思われる物の中にそっと閉じ込めてハンドルを回した。

さらさら。

星とは思えない音と共にちょっと控えめな金色の細石が落ちてきた。そしてそっと、それらを小瓶の中に入れ込んだ。途端に、静かに青に煌めくのだ。なにか、そこに生命が宿ってうごめいているような、そんな感覚を覚えた。

綺麗。それ以上でもそれ以外でもない。青が深い日にはこんなにも星は綺麗になるのか。何故か納得してしまった。それと同時にまるで涙みたいだとも思った。

「どうぞ。これはあくまで本当のかき氷では無いのでそのまま持ち帰ってお守りとして使ってください。」

 そう言って少女は細い青いリボンを小瓶につけて手渡してきた。

 …一回本当に食べれると思った私が恥ずかしい。

「それではそろそろ店仕舞いとしましょうかね。」

「あの、貴方は何をしている方なんですか?ここに来たらまた、会えますか?」

 また会いたい。ここは私を包み込む全てが青いけど、なぜだかどこよりも暖かくなるんだ。
それは多分は私が仕事で追い込まれているからだとは思っている。そう思っても、ここで、この少女と出会えたから暖かくなれると信じている自分がいる。

「私は青を研究しているんです。また会えるかは分かりませんが、青いところだったら会えるかもですね。」

「その、研究の名前とかは教えていただけませんか?」

「【青のケンキュウジョ】です。」

 どこよりも冷たく、どこよりも暖かいただひとつの青を探して。青のケンキュウジョは今日も皆様に青を授けます。
 またお会いしましょう。

1/5/2025, 2:07:56 PM

「冬晴れ」


「なんで海?」

 最近はずっと窓を覗くと真っ白。雪はずっとふわふわ人のことも気にせずに降りてくる。
 突然鳴り響く一件の通知。それは親友の葵からのものだった。

「今から海にいこうよ。」

 本音としては、こんな寒い日の中さらに海風にさらされるなんて勘弁だ。かといっても、やることはないので来てしまった。

「もう帰っちゃうの?伊織ちゃん。」

「うん。ごめんだけど帰りたいや。今日結構冷え込むし。」

「そっかぁ。」

こんな日に海に誘うのは流石に異常だとは自覚していたのかあっさりとした返事が返ってきた。

「でもさ、ちょっと見てよ。」

「なに?そっちまで行くともっと寒いよ。」

葵はちょっとした高台に登って海を指差した。

「あんなに白かったのに今じゃすごく青いよ。」

「そう?」

「うん。」

改めて海と向かい合った。
確かに雪ばかりで白くうつり過ぎていたこの風景は今はお日様に照らされてきらきら青に光っていた。

夏以外でもこんなに海に心奪われる日があるんだとなんだか私の心も照らされた気がした。

「で、もう帰っちゃうの?」

ここまで青い海を再認識した日はないだろう。

1/5/2025, 7:16:00 AM

「幸せとは」
正直ぱっと書き出せることはなかった。

「じゃあ、私は今幸せなのかな?」
と言う問いしか思い浮かばなかった。

 一度は考えることだと思うが、その度に答えは出ない。いつの間にかそんな考えすら忘れてしまう。

 多分、それを忘れることが一番の幸せなんだとは思う。人生で直面するこういう問いはきっと答えはでないから。

 だから、もう書くのはやめにして散歩にでも行こうと思う。