【梅雨】
いつだったか
豪雨に見舞われた年
設備が土砂災害に遭った別の支店から
緊急の応援要請が来た
現地では対策本部が設置され
各支店が集まったメンバーで
班編成がされ
各班作業に取り掛かる
一通りの作業を終え
帰宅する頃には
すっかり暗くなっていた
自宅に着き
長女にマッサージをおねだりしようと
汗のせいか雨のせいなのか
重くなった作業服を脱ぎ
床に寝そべると
俺の背中を見た長女が
声も出さず
崩れ落ち震えている
痛みもなく
全く気付いてなかった
豪雨の爪痕
倒れ込んだままの長女が声を絞り出す
「パ.....パ.....パ.......」
「ん?パパ??」
聞き返すと
苦しそうに言葉を吐き出す涙目の長女
「パ....パ.....パ.....パンツがぁ!」
もはや原型を留めていなかった
ゴムしかないような状態だ
その日
マッサージされる事はなかった
【無垢】
ちょっと曲がってしまった自分のもとで
何故か真っ直ぐに育った長女
バカ親も甚だしいが
誰にでも分け隔てなく接する娘を見て
もし学生の時分に
こんな子が居たら好きになってたんだろうなぁ
と思った記憶がある
身内贔屓の成せるところ
一応分かっているつもりだ
しかしその後
身内では無い所で
同じ事を思った
自分が何処かに置いてきてしまったもの
それをしっかり持ったまま
真っ直ぐに歩く
この先
彼女等の行く道が
真っ直ぐなまま歩いて行ける道で有る事を
切に願ってやまない
【終わりなき旅】
そんな大それた人生は歩んでおりませぬ
白と黒
大体の事はその間
片寄る事はあれど
それを0や100と言い切ってしまう危うさ
安心と引き換えの脆さ
そんな事を考えて以来
何かを思う時は
同時に反対の事も考えて
傾きそうな思考を戒める
余計なものに振り回されず
揺さぶられず
自分なりの正解を見据える
繰り返すうちに
コレは56
コレは81
コレは32
あまり労力を使わずに
バランスがとれるようになった
色んな事を上手くやれるようになった
ただ
最近思うようになってしまった
止まってしまった成長
安定と引き換えの脆さ
もし
この来し方
在り方がひっくり返る時が来たら
それはそれは・・・
【ごめんね】
柔らかく柔らかく
ずっと柔らかく
そう思ってたけど
いつの頃からか
意地なのか
見栄なのか
何れにせよ
つまらない何かが顔を出し
その一言が出てこない
そんな場面に出くわし
やっと気付く
自分で思ってるより
堅くなってたみたい
【半袖】
夏が来る
年々暑くなってるように感じるのは
気温のせいなのか
歳のせいなのか
そんな歳になっても
夏休みがあった頃の余韻か
楽しい事が詰まった季節を予感してしまう
いや
もう長い事
そんな事実はないのだけれど
あれ?
苦手な虫も増えるんだった
あれ?
水泳も苦手だった
あれれ?
遊んで回る体力も・・・
仲間も・・・
こんな時だけ
大人だぜ
あ
半袖・・・