─快晴─
えー、実はわたくし、先日死んでしまいまして。
とても他人事のように言ってるって?いやいや、自分でも驚いてますよ勿論!
でもねぇ、その死に様がこれまた綺麗なモンで。
今日はそれを話したくて来たんですよ。
わたしが死んだ日はね、真っ青な空が広がる快晴だったんですよ。
その日は、特別大事な用があった訳でも無かったのでね、散歩に行こうと思いまして。
実はわたしの家の裏には、大きな山がありまして。
これまた見事な桜が咲いているんですよ!
しかもあまり知られていない、穴場だったんです!
だからわたしはその山をとても気に入っておりました。
勿論今年も、見事としか言えないような桜が咲いておりましたよ。
5枚の花弁が風に揺られ、その下には散った花弁の絨毯がありまして。
どうやらわたし、その桜に魅了されましてね。地面なんて見てなかったんですよ。
その先に階段があることを忘れて…。えぇ、皆さん御察しの通り、落ちてしまったのです。
薄ピンクの絨毯に、赤黒い血はとても目立ちました。
そのあとは眠るように…という感じですね。
人も居ない田舎町だったもんで、私が見つかったのかも分かりませんね。
これこそ桜の木の下には死体が埋まってる、ってモノですね。
なんと浪漫ある死に様でしょう…わたくしはとても感嘆したのです!
只でさえ綺麗な桜の下で…おっと、長く話し過ぎましたね。
長くなると止まらないので、これでわたしの最終章は終わりと言っておきましょうか。
是非貴方の死に際も、此方に来た際にお聞かせください。では、また何時か。
─エイプリルフール─
「ねぇ、実は君に話したいことあってさ」
電話中に、彼は言った。
丁度、零時を回る数分前だったと思う。
「僕さ、実はさ、あと少ししか生きられないんだ」
『え、どーゆうこと?』
「手術とかしないといけない病気なんだよね」
その時、リビングから零時を回る音楽が聞こえた。
「ま、嘘なんだけどさ。」
『あ、今日ってエイプリルフールか。』
「騙された?」
スマホから小さな笑い声が聞こえた。
『も~ビックリしたじゃん!』
あはは、なんて笑う声が聞こえてきた。
「じゃ、もう遅いからおやすみ!」
『うん、おやすみ。』
後で思い返したが、笑い声の後ろから、
小さな泣き声が聞こえたのは気のせいだったのかな。
─ところにより雨─
朝、激しく鳴り響くアラームで起きた。
今日は曇。空は曖昧な色をしている。
いつも飲んでいるインスタントコーヒーが無いことに気づき、
なんとなくイライラしながら、テレビをつける。
最初に目についたのは大きな文字で書かれた『ところにより雨』の文字。
嗚呼、だから少し湿っぽかったのか。寝癖が直らないのもそのせいか。
自分の中で正解を見つけた気でいると、窓からポツポツと音が聞こえた。
「…あーあ、今日は最悪だ。」
─特別な存在─
中学校の入学式。
初めて入る教室で、隣になった君。
おどおどしながら聞いてきた、小さな疑問。
「…えっと、こんにちは!好きな曲とかある?」
はじめましてにしては思いきったなぁ、なんて思いながら、
『特にないかな』なんて答えちゃって。
それから少し話して、一年間仲良くしてくれた。
まさか二年生連続で同じクラスになるなんて。
「また同じだ、よろしくね!」
その頃には、君は特別な存在になってた。
一年前には想像してなかったろうな、なんて他人事に思ってた。
そして二年生が終わる頃、また一緒になりたいなんて思ったことも、
私にとって驚きだった。
あぁ、また一緒に、笑いたいな。
卒業式まで好きだったら、告白とかしてみたいな。
私の青春は、ずっと続いていた。
─バカみたい─
「先輩、僕彼女できました!」
目の前には嬉しそうな部活の後輩。
ここで私は、単純に喜べばいいんだろう。
「…先輩?大丈夫ですか?」
『…あぁ、大丈夫だよ。おめでとう。』
入部してからは、一緒に笑ったりからかったり、
時には悔しくて涙を流したり。
とても楽しい毎日だった。
付き合いたいとは、思ってないつもりだった。
でも、いつの間にか傲慢になってたみたい。
『…本当、おめでとう。』
私の口から溢れた言葉は、とても小さく、
悲しいんだと自分でもわかるような声だった。
「え、先輩!?なんで泣いてるんですか!?」
『…いや、なんでもないよ。』
自分から伝えなかったのが悪いんだよ。
本当、バカみたいだなぁ、私って。
『…今まで、ありがとう。』
その言葉を最後に、私の恋は終わった。